1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06750560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 孝行 東京大学, 工学部, 助教授 (20232754)
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Keywords | A system of cities / 国土構造 / 高速交通 / 交通ネットワーク / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
大都市圏への人口・経済機能の集中を解決して、多極分散型の国土構造を実現することは今もって国土計画上の最重要課題とされており、そのための一つの施策として国土幹線的な高速交通網の整備に大きな期待が寄せられている。しかし、これまでは、高速交通網の整備が必ず分散型の国土構造の実現に寄与し得るのか、また、実現したとしても、それが本当に社会的に見て望ましいものであるのかいう問題を科学的に十分に検討した分析は行われてこなかった。そこで、本研究は、地域科学や都市経済学の分野において近年精力的に研究されてきているA system of citiesの理論を用いて、この問題についての回答を探ったものである。 本研究においては、複数の都市が交通ネットワークにより連結されており、交通しの利便性、集積の経済、集積の不経済を反映した各都市の魅力度に応じて人口が配分されるモデルを作成した。このモデルを用いて、数値シミュレーションにより、均衡人口分布を求め、様々な交通条件に対応した国土構造の変化を調べた。主な知見としては、交通費用が高い場合には、分散型の人口分布が実現し、それから交通費用が低減するにつれて単独の都市への人口集中が起こり、さらに低減すると再び分散型の人口分布が実現することが明らかになった。これは、高速交通整備により分散型の構造を実現するには、ドラスティックな交通費用の低下が必要であることを示唆している。 このような構造変化に伴って、各都市魅力度の総計は常に増加するが、総トリップ長も増大することも確かめられた。前者は経済的な効率性を表し、後者は交通に伴う環境負荷の発生量の代理である。そのため、分散型構造の実現に際しては、経済効率の向上と環境保全のトレードオフがあり、両者のバランスするところに社会的に最適な国土構造が存在する可能性があることが示された。
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[Publications] 上田 孝行: "A system of cities modelを用いた交通改善の影響分析" 応用地域科学研究. 1. (1994)
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[Publications] 上田 孝行: "On the derivation of the realized level of utility as a function of population" 第47回土木学会年次学術講演会講演集. 914-915 (1993)