1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06750561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷下 雅義 東京大学, 工学部, 助手 (30242001)
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Keywords | 公共事業用地取得 / 住民参加 / ゲームの理論 |
Research Abstract |
(1)現行制度における住民参加の位置づけと現状の把握 現行の公共事業用地取得に関連する法律や制度について住民参加の規定を把握し、事業の流れの中で住民がどのような形で意思決定に参加しているのかを整理した。事業計画策定段階において地権者、周辺住民等の利害関係者の参加が不十分であること、従って彼らに選択肢がないこと、そしてそれが事業実施段階に影響を与え、難航要因の一つとなっていること、などを示した。 (2)公共用地取得方式の決め方の定式化 (1)での問題点を踏まえて、ある公共事業において用地買収方式と減歩換地方式という用地取得方式のいずれの方式で整備を行う(もしくは事業を行わない)ことにするのかを決定する過程をゲームの理論の考え方を援用して定式化した。ここでは地権者が組織をつくり意思決定主体として事業者との交渉によって用地買収面積と減歩率を決定するというゲームとみなしている。 (3)交渉ルールと交渉解の変化 この交渉ゲームに関していくつかの交渉ルールを設定し、どのようなルールが社会的に望ましいかについて分析した。地権者組織に意思決定権を委ねるのみでは望ましい結果は生じず、このゲームには「囚人のジレンマ」の構造が横たわっていることを明らかにした。 (4)望ましい公共事業用地取得方式に向けての実現方策の検討 「囚人のジレンマ」を解消するために、(1)利得構造を討議によって明らかにすること、(2)討議を踏まえて利益の改善や強制的ルールを導入すること、が必要であることを示した。具体的には、計画策定段階において環境アセスメント、費用便益分析等を通して互いの利得を明らかにすること、選択肢の提供や特典の供与を通して利害関係者の利益の改善を図ること、などが求められる。
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