Research Abstract |
本研究は,湾奥部などの停滞水域においても十分な水質浄化機能が発揮できると期待されている人工環礁(多空隙を有する堤体で囲まれた静穏水域)の,水質浄化効果の実証と水質浄化のメカニズムの解明を目的としている.今年度は,9月から2月までの期間に,大阪湾沿岸に存在する2つの人工環礁において環礁内外の水質の実地調査を行い,水質浄化の様子を調べた.今後,春先および梅雨の時期における水質の実地調査,ならびに人工環礁模型を用いた水槽実験を行う予定である.以下に今年度の研究実績として,実地調査の方法と調査結果の概要を示す. 1.調査方法 実地調査は,貝塚市二色の浜と大阪市南港野鳥園の2箇所において,平成6年9月から平成7年2月の期間に数回にわたって行った.調査項目は,水温,容存酸素量(DO),水素イオン濃度(pH),塩分濃度,濁度,透明度の6項目で,透明度以外の項目においては,表層から底層までの鉛直分布を調べた.また,調査時刻は差し潮時,引き潮時,干潮時,満潮時などにあわせて行い,時間的な変化の様子も調べた. 2.調査結果 差し潮時,引き潮時の溶存酸素量の鉛直分布の比較から,人工環礁の堤体における接触酸化機能は非常に大きく,堤体を通過した直後の海水は貧酸素水となっていることがわかった.また,水温,水素イオン濃度,濁度の鉛直分布,および透明度の調査から,植物プランクトンや藻類が光合成を行うことのできる有光層が季節や気象条件によってかなり変化することがわかった.このことは,堤体で接触酸化されたことによって失われた溶存酸素の補給が十分に行われるかどうかは季節や気象条件に大きく左右されることを意味している.
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