1994 Fiscal Year Annual Research Report
作物根のムシゲル分泌に関する生態学的評価(土壌の摩擦抵抗減少効果の判定)
Project/Area Number |
06760015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯嶋 盛雄 名古屋大学, 農学部, 助手 (60252277)
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Keywords | 作物根 / 根冠 / ムシゲル / 微速度撮影 / 分泌 |
Research Abstract |
作物根の根冠ムシゲルは、土壌中で伸長するより根端と土壌粒子との間の摩擦抵抗を緩和する潤滑油のような働きをしていることが従来より推測されてきたが、土壌の特定部位における粘性の高いムシゲルの動態を捉えることは困難であるため、その実態の直接的な証明は現在までなされていない。本研究では実際に土壌中で生育している作物根の根端部位を解剖顕微鏡レベルでタイムラピスビデオシステムを利用して数日間連続的に観察することを主体として、この仮説の真偽を直接的に証明することを目的とした。透明なアクリル板製の根箱を作成し鉛直下方に対し15度傾斜した状態で固定し、上下方向に根箱が移動できるようにした。ズ-ム式実体顕微鏡に接続したCCDビデオカメラを根箱に垂直になるように固定し、アクリル板上に展開したトウモロコシ種子根根端部とその周辺部の土壌を数十倍の倍率でビデオカメラに撮影した。入力信号は、タイムラプスビデオレコーダーに記録させた。播種方向、播種後の種子根の齢、土壌の充填状態、含水比などの検討を行ない、最も観察に適した条件下において、約2日間のビデオ観察を繰り返した。その結果、種子根根軸とアクリル板の間にムシゲル様物質の存在を確認した。このムシゲル様物質の量は増減しているように観察できたが、今後、根軸とアクリル板との接触状態が一定になるようにして検討を行なう必要がある。現段階では、土壌粒子と根冠との間にあるムシゲルは完全には撮影が行なえていない。ある時間帯において部分的に根冠ムシゲルが観察される場合もあるが、観察結果はまだ安定はしていない。ムシゲルが土壌粒子間に拡散してしまい観察が容易ではないと考えられるので、今後とくに観察視野のコントラストと解像度を高めることと、土壌の物理的条件のさらなる改良を平行して観察を進める予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 奥山英利ら: "イネ科作物根の補償能に関する種間比較" 日作東海支部報. 117. 1-2 (1994)
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[Publications] 池田利治ら: "イネ科作物根におけるリグニンの比較組織化学" 日作東海支部報. 117. 3-4 (1994)
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[Publications] 波多野朋恵ら: "ステビアの耐湿性に関する研究" 日作東海支部報. 118. 37-38 (1994)
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[Publications] 飯嶋盛雄ら: "作物根の圧縮土壌ストレス耐性に関する比較作物学的研究1." 日作東海支部報. 118. 41-46 (1994)
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[Publications] 泉泰弘ら: "In vitro系における水稲根系発達の定量的解析" 日作東海支部報. 118. 45-46 (1994)
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[Publications] 飯嶋盛雄ら: "微速度撮影による作物根の伸長速度の解析1." 日東海支部報. 119 発表未定. (1995)