Research Abstract |
本研究課題の目的は,卓越年級群を発生して大きく変動する資源に対して,その資源変動を各海域で捉えて,時系列モデルを用いてモデリングし,統計的な制御方法の基板とすることである.トラフグの資源変動も卓越年級群の発生に大きく依存しているので,この資源を研究対象とした. まず,トラフグの主要産卵場(瀬戸内海中部と開門海峡,伊勢湾,若狭湾)とトラフグの生育場・越冬場(豊後水道,紀伊水道,遠州灘,下関南風泊市場など)で,トラフグを対象として操業する漁業の漁獲統計を収集した.また.漁獲対象のトラフグの年級群を知るために生物測定を行い,年級群分析を行った.さらに,同一産卵場からの移動・回遊に伴う資源変動の伝達を,海域間の変動の相互相関分析を行い,伝達関数を決定した.卓越年級群の発生と伝達についての産卵場間の差異について着目して,分析を加えた. 瀬戸内海から生育期に資源が回遊することが標識放流などで確認されている伊予灘,豊後水道における主な漁獲は,秋漁期には1+歳魚を,冬漁期には当歳魚(0+歳)が加入して,年級群の強さによって0+歳か1+歳のとなることが明らかになった.この伊予灘,豊後水道における漁獲量と2年後の産卵場での漁獲量について相互相関分析を行ったところ,2年の時間ずれをもって相互相関係数0.9以上の有意な相関を示した.この2年の差は,伊予灘,豊後水道での主な漁獲対象が0+歳と1+歳の対して,産卵場での完全加入年齢が3歳であることから,同一資源の年級群を漁獲していることを示している.またこの回分析から,両者地域間の伝達関数を求めた.今回,新たに行った統計資料収集によって,若狭湾におけるトラフグの漁獲が産卵期だけに行われることが明らかとなり,その漁獲量変動は瀬戸内海の産卵場の漁獲量変動ととほぼ一致した.これに対して,産卵場でも伊勢湾・遠州灘における漁獲量変動は,瀬戸内海産卵場とはトレンドが大きく異なり,産卵場間の系群の差を示唆している.また,トレンドを除去した短期変動傾向は,いずれの産卵場でもトラフグの雌成熟年齢と同一の4,5年周期成分を持つ同一の変動を示し,自己回帰性が示唆された.
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