1994 Fiscal Year Annual Research Report
競争吸着によるホタテガイ中腸腺からのカドミウム除去に関する研究
Project/Area Number |
06760182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関 秀司 北海道大学, 水産学部, 助手 (10179327)
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Keywords | ホタテガイ中腸腺 / カドミウム除去 / 競争吸着法 / 不溶化フミン酸 |
Research Abstract |
【I.吸着剤の調製】 腐食物質であるフミン酸は金属イオンに対して強い錯体形成能力を有するが、水溶性であるためそのままでは吸着剤として用いることはできない。そこで、このフミン酸をカルシウム塩の沈殿とした後、330℃で加熱する(卓上型マッフル炉使用)ことによりpH11以上、また沸騰水中においても不溶な吸着剤(IHA)を調製した。 【II.中腸腺からのカドミウム脱着機構の解明】 ホタテガイ中腸腺を一種の吸着剤と考え、カドミウムおよび水素イオン濃度の異なる水溶液中でのカドミウム吸着実験を行った(pHメーター使用)。報告者が提案した吸着モデルを用いた解析から、中腸腺のカドミウム吸着容量、カドミウム吸着サイトの酸解離定数および錯体形成定数を決定した。さらに、酸処理法によるカドミウム吸着実験の結果とモデルによる推算値の比較から、脱着を迅速に行うために中腸腺を細かく刻んだ場合、中腸腺中のカドミウム結合タンパク質の46%が液相に溶出することが明らかとなった。 【III.「競争吸着法」によるカドミウム除去実験】 本研究の最終目的である「不溶化フミン酸を用いた競争吸着法によるカドミウム除去実験」を行った。その結果、従来の酸処理法では処理液のpHをpH3付近まで下げる必要があったのに対し、「競争吸着法」では乾量基準で中腸腺の1/3以下の吸着剤(IHA)を添加することによりpH5付近で十分な除去効果が得られた。また、酸処理法では処理後、液相のカドミウムを除去するために2次処理が必要であったのに対し、「競争吸着法」ではそのほとんどがIHAに吸着され、処理液中のカドミウム濃度は排水基準値以下であった。これらの結果から、報告者が提案した「競争吸着法」は従来の酸処理法に比べ、より穏和な条件下において中腸腺および処理液からのカドミウムの同時除去が可能な優秀な方法であることが明らかとなった。また、実験結果はモデルによる推算値とよく一致しており、実操作における操作線の作成が可能であることが明らかとなった。 ※これらの研究結果については化学工学会第27回秋季大会において口頭発表を行った。
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