1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトパピローマウイルス16型癌遺伝子の細胞特異的転写調節領域に結合する因子の同定
Project/Area Number |
06770230
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
谷口 彰良 東邦大学, 薬学部, 助手 (70256759)
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Keywords | HPV16 / NF1 / 細胞型特異性 / ケラチノサイト / 転写調節 / エンハンサー / 転写因子 / 癌遺伝子 |
Research Abstract |
ヒトパピローマウイルス16型癌遺伝子の細胞特異的転写調節領域に結合する因子の同定 [研究の目的]HPV16の癌遺伝子であるE6/E7の発現はこれらの遺伝子の上流に存在するLong control Region(LCR)で調節を受けることが知られている。私はこのLCR中にヒト上皮細胞で特異的にエンハンサー活性を示す領域(CTRE)を見いだした(Virology,195,500-510,1993)。今回はこのCTREに結合する上皮細胞の因子について検討した。 [結果]CTREは174塩基対からなるエンハンサーであり、4ケ所のタンパク結合部位(FP1,FP2,FP3,X)が存在することがすでに知られている。そこで、この4ケ所のタンパク結合部位に相当する合成DNAを作製しゲルシフトアッセイにてそのタンパクの細胞間での違いを検討した。その結果、FP1,FP2,FP3に結合するタンパクに細胞特異性を見いだした。この領域に結合する因子はマウスNF1抗体を用いたsupershift assayや、competetion assayからNF1様因子であると考えられる。そこで、FP1,2,3に結合する因子をpapillomavirus enhancer binding NF1 like protein(PVNF)と名付けた。このPVNFはUV-crosslinking assayとwestern blotから分子量約70KDaのタンパクであり、いままで報告されているNF1とは分子量が異ることから、新しいタイプのNF1様因子であると考えられる。しかし、予想に反しPVNFは上皮細胞とその他の細胞で分子量に違いは見られなかった。脱リン酸化実験からこのPVNFは上皮細胞とその他の細胞ではリン酸化の受ける程度が異っていることが明らかになった。さらに、proteolytic clipping gel shift assayからその違いは転写活性化ドメインに存在することが明らかになった。以上の結果は、この新しいタイプのNF1様因子であるPVNFのリン酸化の程度がHPV16の癌遺伝子の細胞特異的転写調節に重要であることを示唆するものである。以上の結果はVirologyに投稿中である。
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