Research Abstract |
基礎疾患及び運動習慣のない40歳から54歳の中年女性18名,55歳から65歳の高年女性18名を対象とした。それぞれを運動群9名及び対照群9名づつに分け,運動群には最大酸素摂取量の50〜60%の運動負荷を1日30〜60分間,週3〜4回の頻度で15週間行わせた。運動期間の前後に,体重,BMI,水中体重法による体脂肪量,安静仰臥位及び立位1分後の血圧,心電図RR間隔変動,心拍数,呼吸数を測定した。対象の内,中年運動群8名(平均年齢48.8歳,平均BMI27.6),中年非運動群7名(平均年齢47.4歳,平均BMI26.8),55歳から65歳の高年運動群9名(平均年齢58.2歳,平均BMI26.8),高年非運動群8名(平均年齢60.3歳,平均BMI26.5)について運動期間前後の測定結果を得た。15週後のBMIは中年運動群で平均1.8,高年運動群で平均2.1有意に減少した。迷走神経心臓枝の活動を反映する安静時のRR間隔変動係数(CV)は,中年運動群で3.2%から4.8%へ増加したが,高年運動群では2.7%から2.9%への変化であり有意ではなかった。迷走神経心臓枝の活動をより鋭敏に反映する安静時の心拍変動スペクトルの0.15〜0.50Hzの積分値(HF)は,運動前,中年運動群が157msec^2に対し,高年運動群では76msec^2と低く,加齢により迷走神経心臓枝の活動が低下することが推察された。安静時HFは15週後,中年運動群で461msec^2,高年運動群で179msec^2へと増加し,その増加量は,中年運動群の方が大きかった。運動処方は迷走神経心臓枝の活動を活性化させるがその効果は加齢により弱まることが明らかになった。また,立位負荷によるHFの抑制も運動継続後に大きくなる傾向にあったが,その抑制の度合も中年運動群の方が大きかった。立位負荷によるHFの抑制には交感神経活動も関与しているため,運動は,交感神経活動の活性化にも関与し,その影響も迷走神経心臓枝への影響と同様,加齢により減弱することが推察された。
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