1994 Fiscal Year Annual Research Report
焼けた死体の生活反応としての熱ショックタンパク質の有用性
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06770332
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
笠井 謙多郎 産業医科大学, 医学部, 助手 (40169397)
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Keywords | ストレスタンパク質 / ユビキチン / 焼死 |
Research Abstract |
1.ラット臓器におけるユビキチン(Ub)の熱ストレスによる局在の変化 非ストレスラット各臓器(肝臓、腎臓、心臓、脳)のUbは、通常のタンパク質と同様、ゴルジ装置周辺の分泌顆粒および一次ライソゾームに局在し、臓器間に差は認められなかった。Ubは熱ストレス暴露(直腸内温度が40℃になるまで全身を温水中で加温)により核の内部、特に核小体に移行することが明らかとなった。この移行は可逆的であり、ストレスに暴露後約60分で元の分布に戻った。これらの移行反応は電気泳動的にも検出可能であった。即ち、非ストレス時はUbのバンドは一本であるが、ストレスによりさらに高分子領域に複数のバンドが発現し、時間の経過とともにこのバンドは消失した。 2.実験的焼死例におけるUb量の変動 熱ストレスにより産生されるUbの量は、暴露温度、時間および臓器によって差が認められた。暴露温度によるUb量の変化は特に脳において著明で、暴露温度100〜180℃までは温度依存的にUb量が増加し、それ以上の温度では増加量の変化は認められなかった。また、この反応は臓器によって発現時間が異なり、脳、心臓では暴露直後から著明に上昇したが、肝臓、腎臓では暴露約60分後からであった。 3.法医解剖事例におけるUb発現の変化 肝臓を試料として、Ubが検出されるタンパク質分画の分子量を指標として分類した。非焼死例では10KDを中心とする分画のみで、焼死例ではそのほかに高分子および低分子領域にもUbが含まれることが判明した。 これらの結果から、Ubが焼死の診断に有用であることが示唆された。
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