1994 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー型痴呆脳における病態としてのアミロイド・アンギオパチー-脳循環動態からみた血管反応性と組織化学的検討-
Project/Area Number |
06770745
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
川勝 忍 山形大学, 医学部, 助手 (00211178)
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Keywords | アルツハイマー型痴呆 / 脳血流 / SPECT / アミロイド・アンギオパチー / フィゾスチグミン / メイロン |
Research Abstract |
アルツハイマー型痴呆では、大脳皮質連合野とくに大脳後半部の側頭頭頂後頭葉での脳循環代謝の低下が見られることが、ポジトロンCTやシングルフォトンエミッションCT(SPECT)による画像診断で確かめられている。これらの部位における脳循環代謝の低下の背景としては、神経細胞の脱落とともに、脳血管そのものの変化も関与しているのではないかと考え、SPECTによる薬剤負荷時の脳血管反応性および剖検脳でのアミロイド・アンギオパチーの分布について検討した。 SPECTによる検討では、アルツハイマー型痴呆患者、10例、平均年齢62歳に対して、1)脳血管の化学的調節を介して細い脳血管を拡張させるメイロン点滴負荷前後、および2)脳血管のアセチルコリンの神経性調節を介しての太い脳血管を拡張させる方法として、コリン作動薬であるフィゾスチグミンを経口投与し投与前後、の脳血流量を測定した。その結果、メイロン負荷では、投与前に脳血流量が比較的保たれている前頭葉では、脳血流量の増加がみられ血管反応性は保たれていると考えられたが、投与前の脳血流量の低下が著しい頭頂後頭葉では、反応が乏しかった。また、フィゾスチグミン投与前後の比較では、前頭葉、側頭葉では有意な脳血流量の増加が見られたが、頭頂後頭葉では、殆ど脳血流量の増加はみられなかった。従って、頭頂後頭葉では、化学性、神経性調節ともに障害されている可能性が考えられた。次に、アルツハイマー型痴呆の剖検例3例で、脳血管壁のアミロイドの沈着(アミロイド・アンギオパチー;AA)の程度と分布を検討した。AAは、大脳皮質全般にみられるが、前頭葉ではその程度は軽度で、頭頂後頭葉では高度であることが、一貫してみられた。 以上より、アルツハイマー型痴呆では頭頂後頭葉の脳循環の低下の原因として、AAすなわち脳血管そのものの病変が関与していることが明らかにされた。
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