1994 Fiscal Year Annual Research Report
感情病におけるナトリウム(Na)-カリウム(K)共輸送機構について
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06770778
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
檜山 俊夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (80246438)
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Keywords | 感情障害 / 赤血球膜 / リチウム / ナトリウム(Na)-カリウム(K)共輸送機構 |
Research Abstract |
感情障害に於ける細胞膜異常仮設が言われており、申請者はその観点からヒト赤血球膜を使って、感情障害に於ける陽イオン輸送機構の一つであるナトリウム(Na)-カリウム(K)共輸送機構について検討した。慈恵医大外来及び入院中の感情障害者78例(単極性うつ病者44例、双極性うつ病者34例)、健常ボランティア44例、精神分裂病者26例、神経症者7例、計155例に、実験の目的ならびに方法を十分に説明し、同意を得た上で採血を行った。 感情障害者のLPG値[実験にはリチウムを使い、リチウムがこのナトリウム(Na)-カリウム(K)共輸送機構によって輸送される量(ミリモルバ リットルバ アワ-:mM/Lhrで表す。)をLPC値とした。]では、0.097±0.009mM/Lhr(以下単位略)、そのうち単極性うつ病者では0.095±0.014、双極性うつ病者では0.101±0.008であった。一方、健常ボランティアでは0.130±0.010、精神分裂病者では0.118±0.010であった。単極性及び双極性うつ病者のLPC値は健常ボランティア、精神分裂病者、神経症者のいずれのLPC値に対しても有意に低値を示していた。一方、精神分裂病者及び神経症者のLPC値は健常ボランティアと有意な差はなかった。単極性及び双極性うつ病者に於ける病相関比較では、いずれの病相も健常ボランティアのLPC値に比し有意に低値を示した。また、健常ボランティアのLPC値は現在年齢、初発年齢、Hamiton's scoreとの相関は認められなかった。以上より、感情障害に於けるナトリウム(Na)-カリウム(K)共輸送機構の機能低下が推測された。しかし、男女間による問題が残されている。男性の単極性及び双極性うつ病者のLPC値は健常ボランティアに比し有意に低値を示したものの、女性に於いては有意な差はなかった。推測としてナトリウム周期と月経周期との関連性も考えられるが、今後男女間によるLPC値の差について検討していく必要がある。
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