1994 Fiscal Year Annual Research Report
血球系の遺伝子治療をめざしたアデノウイルス発現ベクターの開発
Project/Area Number |
06770834
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鐘ヶ江 裕美 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80251453)
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Keywords | ウイルスベクター / 遺伝子治療 / リコンビナーゼ / Cre / アデノウイルス |
Research Abstract |
組換えアデノウイルスは各種細胞への高い遺伝子導入効率を有し、近年遺伝子治療等の分野で注目されている。しかし、血球系の細胞への導入効率は細胞間で異なり、また一過性の発現ベクター系であるためstem cellなどでは発現細胞の消失が特に問題とされていた。そこで、本研究ではまず血球系の細胞での遺伝子導入効率を比較し、つぎに導入効率の高い細胞を用いて長期発現系のモデル系を確立することを目的として研究を行った。血球系の細胞株のJurkat細胞とBa/F3細胞における発現量及び発現頻度を検討したところ、Jurkat細胞ではウイルス量に依存して発現量、発現頻度が上昇し、細胞当りのウイルス量(MOI)が100以上では100%の細胞で発現が確認された。一方Ba/F3細胞では発現頻度はMOIに依存せず、MOIを上げても約20%の細胞でしか発現が確認されなかった。そこで、長期発現系のモデル系として、100%の細胞に遺伝子を導入することが可能であったJurkat細胞へ複製可能な環状分子を導入できるかどうかについて検討を加えた。P1ファージのリコンビナーゼCreは、34bpのloxP配列を認識して部位特異的相同組換えをおこし、最終的に環状分子を生成する。まずCre発現組換えアデノウイルスと標的ウイルス(stufferの両側にlixP配列を持ち、その下流にマーカー遺伝子を有する組換えアデノウイルス)をJurkat細胞に同時感染し、細胞での環状分子の生成を検討した。その結果、Creを導入してloxP配列部位での特異的組換えをおこすことで、100%のJurkat細胞でstuffer領域が環状分子となって切り出され、マーカー遺伝子が発現することが確認された。更にCOS細胞の実験から、stufferをSV40複製起点を持つ発現単位に変えた場合、この環状分子が複製することは確認されている。そこで、現在の系に血球系の細胞での複製が可能な複製起点と発現単位を応用することで、血球系の細胞系での発現持続型エピゾ-マルベクター系確立への可能性が示唆された。
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[Publications] Y.Kanagae,et al.: "A simple and efficient irethod for purfication of infections recombinant adenovirus" Jpn.J.Med.Sci.Biol.47. 157-166 (1994)
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[Publications] Y.Kanagae,et al.: "Origin and evolutionaly pathways of the H1 hemagglutinin gene of avian,swine and human influenzavimses…" Arch Virol.134. 17-28 (1994)
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[Publications] Y.Nakamura,et al.: "Adoptive immunotherapy with murine tumor-specific Tlymphocytes engineered to secrete interleukin 2" Cancer Research. 54. 5757-5760 (1994)
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[Publications] H.Chang,et al.: "Highly efficient adenovirus-mediated gene transfer into renal cells in culture" Kidney International. 47. 322-326 (1995)
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[Publications] 鐘ヶ江裕美,他: "アデノウイルスベクターによる遺伝子導入" 実験医学(増刊),羊土社. 12. 1804-1810 (1994)