1994 Fiscal Year Annual Research Report
核DNA損傷度測定による肝切除における血流不良域の評価と処置法
Project/Area Number |
06770907
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐藤 勤 秋田大学, 医学部, 助手 (90235367)
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Keywords | 肝切除 / DNA損傷 / 抗single-stranded DNA抗体 / apoptosis / 肝流入血行遮断 / 門脈遮断 |
Research Abstract |
肝切除に際して生ずる血流不良域の処置法を明らかにすべく以下の実験を行った。 【実験I】30%肝切除群(C群)、30%肝切除に左内側葉の門脈遮断を加えたP群、30%肝切除に同領域の門脈+肝動脈遮断を加えたT群の3群を作成し、血流不良域と無処置域各々について比較した.DNA損傷度の検索には、DNAの単鎖部分とのみ反応し、apoptosisを認識する抗single-stranded DNA IgG(抗s-sDNA)抗体を用い、肝再生の指標にはBrdU免疫組織染色を用いた. (1)肝肉眼所見と肝重量の変化:(血流不良域)P群では、術直後から急激に萎縮し、術後28日目には18%になった.T群では、術直後には壊死による腫脹を認めたが、次第に吸収され28日目には33%になった.(無処置域)肝重量はP群、T群ともに急激に増大し、14日目には300%に達した.(2)血流不良域のDNA損傷度(抗s-sDNA抗体標識率):C群残存肝では0.01%未満であった.P群では、術直後0.15%、術後7日に0.30%に増加した.T群では、術直後に0.15%に増加したが、その後は0.01%未満に低下した.(3)無処置域のBrdU標識率:P群、T群ともに術翌日に各9.2%、12.8%に増加後、次第に減少し術後7日には0.2%になった. 【実験II】上記3群において、肝切除48時間後に非致死量のエンドトキシン(LPS1mg/kg)を静注し、負荷に対する個体の抵抗性(生存率)、肝障害の程度を検索した.C群では、全例が生存し、LPS投与6時間後の血清GOT値は平均408U/Iであった.P群でも、全例が生存し、GOTはC群と同様であった.一方、T群では死亡率33%で、LPS投与6時間後の血清GOT値は平均2337U/Iと著明に上昇し、肝血流量はLPS非投与群と比較して、血流不良域、無処置域ともに50%に低下していた. 【結論】肝切除に際し生ずる血流不良域は、門脈血流のみの血流不良であれば処置を要しない.一方、門脈+肝動脈血流の遮断は、肝再生は促すものの、LPS負荷に対する抵抗性の減弱を生ずるため、残存させることは避けるべきである.
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