1994 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌の浸潤・転移過程における間質破壊の機序に関する分子生物学的検討
Project/Area Number |
06770991
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桜井 嘉彦 慶応義塾大学, 医学部・外科, 助手 (90245514)
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Keywords | 胃癌 / マトリックス分解酵素 / MMP-1 |
Research Abstract |
【方法】1.in situ hybridization法(ISH)によるMMP mRNA発現の局在に関する検討:手術により切除された胃癌先進部組織を4%paraformaldehydeで固定後、ISHを行い、同時に連続切片で各種特殊染色を行って、MMP mRNA発現細胞の同定を試みた。probeは、MMP-1(間質コラゲナーゼ)とMMP-9(92kDゼラチナーゼ)、TIMP-1(tissue inhibitor of metalloproteinase-1)に対するcDNA probeをrandom primer法により^<35>Sで標識したものを用いた。2.免疫組織染色法によるMMP、IL-1蛋白発現に関する検討:マウス抗ヒトMMPモノクローナル抗体、ウサギ抗ヒトIL-1ポリクローナル抗体を用いた間接法により蛋白レベルでMMP、IL-1蛋白の局在を検討した。【結果および考察】1.MMP-1蛋白は癌先進部組織中の間質細胞(顆粒球、線維芽細胞、リンパ球系細胞)の胞体に一致して発現が認められた。2.MMP-1mRNA、MMP-9mRNA、TIMP-1mRNAは、癌先進部組織中の間質の細胞に局在が認められた。3.MMP-1mRNAは、癌細胞そのものに発現を認めず、連続切片を用いた特殊染色との比較検討で、好酸球における発現が示唆された。4.IL-1蛋白は間質の好中球に発現が認められた。5.胃癌の臨床病理学的所見との比較検討で、分化型胃癌に比して、低分化型胃癌でMMP蛋白、遺伝子発現が低い傾向にあった。、我々の検討により、腫瘍の浸潤、転移過程でのMMP産生において、宿主側の細胞が重要な役割を演じている可能性が示唆され、腫瘍細胞と宿主細胞との刺激伝達、さらには細胞外マトリックスの代謝機序を解明していくうえで興味ある所見が得られた。
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