1994 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌における基底膜の破壊・ラミニンレセプターの発現と浸潤・転移に関する研究
Project/Area Number |
06771008
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
牟禮 勉 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30210074)
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Keywords | 大腸癌 / ラミニン / 免疫組織化学 / 肝転移 |
Research Abstract |
1.はじめに:ラミニン(以下LN)は細胞外matrixの構成成分の一つで基底膜に存在する.上皮性細胞から発生した癌組織は基底膜を何らかの形で利用し周囲組織へ浸潤・転移している.大腸癌の場合原発巣で癌腺管周囲に基底膜を形成しているものは肝転移に有利であると言う報告もある.大腸癌肝転移とLNの発現と関係を検証してみた. 2.対象と方法:1985年から1989年までの当院での大腸癌手術切除症例のうち61検体を対象とした.病変の診断は術前の臨床診断およびHE染色切片で行った.抗ヒトLN抗体を1次抗体としABC法で染色し,LNの発現を評価した.なお前処置にはペプシンとプロテアーゼとの消化法を用いた.肝転移および肺転移は同時性のものと,術後発見された異時性のものとを含んでいる.再発のない症例は少なくとも3年間の経過観察を行った.LNの発現程度と大腸癌の組織型,初回手術時の臨床病期,肝転移,リンパ節転移,肺転移の有無を比較検討した. 3.結果:ラミニンの染色程度は大きく4段階に分け,61例中LN(-)は7例11.5%,LN(±)は20例32.8%,LN(+)は31例50.8%,LN(++)は3例4.9%と(+)以上のものが55.7%を占めた.組織型別には高分化が20例32.8%,中分化が37例57.8%,低分化のものはなくその他のものが4例あった.組織型では高分化のものがLNの染色性が強い傾向があった.肝転移は12例19.7%にみられたが,LNの染色性の強さとでは明らかな傾向はなかった. 4.考察:これまでの報告では,大腸癌症例のうちLN(+)は1/3〜1/4で,今回の我々の検討では1/2以上の症例が陽性であったのと大きな差がある.これはLNの染色方法(特に前処置と1次抗体の違い)によるものと考えられる.また症例数が少なく統計学的に有意差を出せなかったものと考えている. リンパ節転移や肺転移に比し肝転移がLN(+)とLN(-)との比に差がある傾向があり,今後方法も検討した上でさらに症例を重ね,また大腸癌肝転移巣ではLNの発現がどうなっているのかも確認する予定である.
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