Research Abstract |
材料と方法:体重300g前後のウィスター系雄ラットを用い,背部皮膚脱毛後,右内頚静脈よりシリコンカテーテルを挿入し静脈路を確保,ついで,背部中央で尾側を茎とする2×7cmの乱走型皮弁を肉模様を含め挙上し元の位置に縫合した。TxA_2受容体拮抗剤(S-145)20,40mg/kgを経静脈的に,20mg/kgを腹腔内投与(各8匹)し,S-145が乱走型皮弁の生着に及ぼす影響について検討した。さらに,同様の皮弁作成後,皮弁基部より2cm遠位部でレーザードップラー血流計により血流量を測定後,S-145 20mg/kg,TxA_2合成酵素阻害剤(ozagrel sodium)100mg/kg,PGE,30μg/kgをそれぞれ一回経静脈投与した。皮弁作成後24時間に同様の部位で血流量を測定後,皮弁生着端を中心に2×2cmの皮弁全層組織を採取し重量を測定,100℃のオ-ブンに入れ48時間後に再び重量を測定し,浮腫量(%水分含有量)を計算した。結果:S-145 20,40mg/kg静脈内,20mg/kg腹腔内投与群のsurvival length-dye distanceはそれぞれ12.1±2.3,11.4±3.7,7,0±2.8mmで皮弁生着長は延長した。S-145,ozagrel sodium,PGE_1投与群の皮弁作成後24時間の血流量はそれぞれ,4.4±3.5,5.2±2.9,3.4±1.0ml/100g/min.で,%水分含有量はそれぞれ,72.5±2.1,71.9±1.3,70.7±2.7であった。考察:本実験より,TxA_2受容体拮抗剤は既に報告されているPGE_1やozagrel sodiumと同等の皮弁延長効果を示すことが観察された。TxA_2受容体拮抗剤はTxA_2の産生のみを抑制し,内因性PGI_2の増減には影響を及ぼさないことから,血管拡張に伴う皮膚血流量や組織の浮腫形成では,TxA_2合成酵素阻害剤やPGE_1製剤に比して増加しないと推察したが,今回の結果では,これら薬剤投与後の皮弁血流量,浮腫量では有意差は認められず,TxA_2受容体拮抗剤の生着長延長作用がTxA_2産生減少による血小板凝集抑制作用のみに起因するということを示すことはできなかった。
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