1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06771451
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関 哲郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (50196945)
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Keywords | 癒着性中耳炎 / 耳管機能 / 中耳腔粘膜障害 |
Research Abstract |
癒着性中耳炎の実験モデルを作成することを目的にスナネズミを用いて実験を行った。これまでの実験により鼓膜が癒着するための条件として、より完全な形で耳管がブロックされること、及び中耳腔の炎症を遷延化させることにより鼓膜及び中耳腔粘膜に障害を与え、鼓膜の形態学的変化(菲薄化または肥厚)、及び中耳腔に肉芽形成を促すことが必要であることがわかってきた。そこで今回の実験においてはスナネズミの耳管鼓室口を電気焼灼することによって耳管をブロックした後に、中耳腔粘膜を極小テラメッサーにて掻爬し中耳腔粘膜を障害させた。処置後12-16週で断頭し、中耳形態学的変化を光学顕微鏡下に観察した。この2つの条件を備えた実験群の約3割に鼓膜の全面癒着例、また約3割に中耳腔に肉芽組織が形成され、鼓膜と鼓室岬部がその肉芽組織を介して癒着していたる例を認めた。各条件単独群では鼓膜の癒着にまで至る例はなかった。とくに耳管をブロックしたのみでは中耳腔に滲出液の貯留を認めるのみ(いわゆる滲出性中耳炎様状態)であった。このことから従来いわれていたように鼓膜の癒着性変化を起こすためには耳管の機能も重要であるが、中耳腔粘膜の障害を起こすことも不可欠であると考えられた。本実験系において今までの報告例よりかなり高率に鼓膜の癒着性変化を認めたことはこの実験系が癒着性中耳炎の実験モデルになりうる可能性を示唆させた。今後は粘膜掻爬以外に、細菌の死菌、酵素、化学物質等さまざまな方法によって中耳腔粘膜を障害した際の変化、及び耳管ブロック+中耳腔粘膜障害を引き起こした際の経時的変化を捉えることによって癒着に至る過程についても検討していきたい。
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