1994 Fiscal Year Annual Research Report
S.mutansの付着に関わるグルカン合成酵素系の遺伝子工学的解析
Project/Area Number |
06771584
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 卓 大阪大学, 歯学部・附属病院, 講師 (00228975)
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Keywords | グルコシルトランスフェラーゼ / スクロース依存性付着 / Streptococcus mutaus |
Research Abstract |
トランスポゾンTn1545由来のカナマイシン耐性遺伝子(kmr)をGTase-IをコードするgtfB遺伝子がクローニングされたプラスミドpSK6の中間に挿入し,S.mutansMT8148株に形質転換してallelic replacementによる挿入変異株を作製した.その結果コロニー形態の異なる3種類の形質転換株が分離された. サザンブロットを行ってkmrの挿入部位を調べたところ,コロニー形態がスムース型とラフ型の中間型を示すB29株はgtfBにkmrが挿入し,一方,親株,と同様のラフ型のB58株はgtfCにkmrが挿入していた.また,スムース型で親株よりもやや小さめのコロニーであるB32株はgtfBの後半部とgtfCの前半部が欠落し,その間にkmr遺伝子が挿入していることが明らかになった.これら変異株のGTaseの発現をウエスタンブロットで解析するとサザンブロットの結果を反映して,gtfBに挿入が起きたB29では菌体上に存在する156kdのGTase-Iの発現が認められず,一方gtfCに挿入が起きたB58株では菌体上に存在する145kdのGTase-SIの発現が認められなかった.gtfBとgtfCの両者間に挿入が起こっていたB32株ではGTase-I,GTase-SIどちらの発現も見られなかった. いずれのタイプのGTase欠失株も親株に比較して,スクロース依存性の付着能は有意に低下していた.付着率の低下は2種類のGTaseが欠失しているB32株が最も著しく,GTase-SI欠失のB58株,GTase-I欠失のB29株の順であった.これらの付着率の低下には各菌株間で統計学的に有意の差が認められた.この結果はGTase-Iに比較して,グルカン合成能が低いとされているGTase-SIが,粘着性のグルカンが合成されるのに特に重要な役割を果たしていることを示唆している.
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