1994 Fiscal Year Annual Research Report
骨形成細胞の石炭化におけるアルカリ性ホスファターゼの生理的役割の解明-異なる培養条件を用いて-
Project/Area Number |
06771619
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学部, 助手 (30230816)
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Keywords | アルカリ性ホスファターゼ / 石炭化 / 骨形成細胞 / 低カルシウム環境 |
Research Abstract |
ラット胎児頭蓋冠由来骨形成細胞をBGJ_b並びにαMEMを用い培養し、これら細胞のアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性を測定した。 活性は、細胞が単層期(con fluence)では正常環境(対照)に比べ、低カルシウム濃度培養液(低Ca環境)で有意に高い値を示した。この活性は、細胞多層化期(multilayer)では両培養液の細胞共に対照では上昇したが、低Ca環境では変動せず、その結果として対照と低Ca環境下の細胞間で、有意な差は認められなくなった。活性は、その後では対照における活性はBGJ_bで上昇せず、αMEMで上昇を続けた。 光学並びに電子顕微鏡に認められた石炭化部位は、BGJ_bの対照並びに両培養液の低Ca環境では認められず、αMEMの対照のみ認められた。αMEMの対照ではALP活性の上昇並びに細胞の多層化と共に結節を形成し、石炭化の開始が認められた。 オステオカルシンはαMEMの対照のみに検出された。 これらの結果は、多くの研究で行われているような培養液へのβ-glycerophosphateやdexamethasone等の添加をすることなしに得られた。 以上の結果から、低Ca培養液において細胞のALP活性が亢進することは細胞の機能を考える上で興味深く、その一つとして環境の異常に対する細胞の反応が推測された。また、培養液の違いによる石炭化現象の有無は、BGJ_bとαMEMの組成の差異のためと推測され、その組成の差異を検討した。その中で、両培養液のグルコース濃度が大きく異なることに注目した(BGJ_b,10mg/ml;αMEM,1mg/ml)。 グルコース濃度が1mg/mlである低グルコースBGJ_b(低G-BGJ_b)、10mg/mlである高グルコースαMEM(高G-αMEM)培養液を作製し、これらと正常の培養液を用い骨形成細胞を培養した。 培養54日目には、ALP活性は、正常のBGJ_bで培養した骨形成細胞に対して、低G-BGJ_bでは有意に高い値を示した。一方、正常のαMEMで培養した骨形成細胞に対して、高G-αMENでは有意に低い値を示した。 従って、培養液の高グルコース濃度によりALP活性の抑制が認められ、石炭化との関連性が示唆された。さらに、骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1細胞)で同条件で実験を行い、この点について検討したが、同様な結果が得られた。 以上の結果から、高グルコース条件下で細胞を培養することは、骨形成細胞の機能低下をもたらしていると考えられる。しかし、培養液の浸透圧等の問題もあり、今後はグルコース以外の問題も考えて行く必要がある。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 松本章: "低カルシウム環境下培養新生児ラット第一大臼歯胚におけるDNA合成能の変化" 歯科薬物療法. 12. 135-139 (1993)
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[Publications] Kuniaki Suzuki: "Sensitivity of intestinal alkaline phosphatase to L-homoarginine and its regulation by subunit-subunit interaction" Japanese Journal of Pharmacology. 64. 97-102 (1994)
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[Publications] Kuniaki Suzuki: "Phosohotyrosine protein phosphatase activity of a clonal osteoblastic cell line(Mc3T3-E1 cell)." Hokkaido Journal of Dental Science. 15. 206-207 (1994)
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[Publications] 吉村善隆: "異なる培養条件下の培養骨形成細胞における石炭化とアルカリ性ホスファターゼ活性の変化" 歯科基礎医学会誌. 36. 123 (1994)