1994 Fiscal Year Annual Research Report
骨誘導因子(BMP)による骨芽細胞の新たな分化誘導モデルの確立と誘導機構の解析
Project/Area Number |
06771641
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
片桐 岳信 昭和大学, 歯学部, 助手 (80245802)
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Keywords | 骨芽細胞 / 筋細胞 / 骨誘導 / BMP / 細胞分化 / 転写因子 |
Research Abstract |
本研究は、骨芽細胞の分化機構を解析し得る新たなin vitroのモデル実験系の確立を目的とした。すでにin vivoでは、Bone Morphogenetic Protein(BMP)が筋組織内で新生骨を誘導することが知られていたが、その細胞レベルでの骨誘導機構は不明な点が多かった。そこで、筋芽細胞株(C2C12細胞)に対するBMP-2の作用をin vitroで検討し、BMP-2が骨芽細胞の分化を強力に誘導することを明らかにした。 C2C12細胞は、筋細胞の分化を解析するために広く用いられている細胞で、高頻度に成熟した筋細胞に分化する特徴を持つ。C2C12細胞をBMP-2存在下で培養したところ、筋細胞の分化マーカーであるtroponin T(Tn T)の発現や多核の筋管細胞はほぼ完全に認められなくなった。BMP-2によって筋細胞への分化が抑制された単核のC2C12細胞は、強いアルカリホスファターゼ活性を有しており、他にも骨芽細胞の分化マーカーとして知られるオステオカルシンの産生や副甲状腺ホルモンに対する反応性もBMP-2の濃度依存的に誘導されることが判明した。さらに、BMP-2による分化の調節機構を明らかにするために、筋細胞の分化を制御することが知られている一連のHelix-Loop-Helix型の転写調節因子群の発現を検討した。BMP-2は、筋細胞の分化に促進的に作用するMy oDとmy ogeninのmRNAの発現を抑制した。一方、BMP-2は、筋細胞の分化に抑制的に作用するId-1の発現を誘導することが明らかとなった。 以上の結果より、BMP-2は筋芽細胞の筋細胞への分化を抑制するだけでなく、それを骨芽細胞に分化誘導することが明らかとなった。筋細胞への分化の抑制には、Helix-Loop-Helix型の転写調節因子の発現調節が関与していることも判明した。この結果は、BMP-2による骨芽細胞への分化誘導にも、ある種の転写調節因子の発現が関与することを示唆している。今後、この骨芽細胞の分化誘導モデルを用いた解析により、骨芽細胞の分化の調節機構が転写因子のレベルで解明されることが期待された。
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Research Products
(1 results)