1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06771681
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
諏訪 利江 昭和大学, 歯学部, 助手 (50153862)
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Keywords | ESR / CT / ヒト歯 / X線 |
Research Abstract |
放射線照射されたヒトの歯に生じるラジカル量を測定することにより個人の被曝線量が推定できると言われている.その際生じるラジカル密度の空間分布に関する知見は歯を線量計として利用するために不可欠である.ラジカル検出の優れた手段である電子スピン共鳴(ESR)とコンピュータ・トモグラフィ(CT)の手法を組み合わせるとラジカル分布が画像化できる.そこで本研究では,特殊な磁場勾配コイルとキャビティを備えたESRスペクトロメータ(JEOL JES-RE-3X)を用いて歯のラジカル密度分布を測定した. 試料として,抜去したヒトの大臼歯の歯冠部分をダイヤモンドディスクにより歯軸に水平な方向と垂直な方向にそれぞれ厚さ1mmで切り出し,水分を含んだまま切片を両側からアクリルで挟んで3MVX線により均等に100Gy照射したものを用いた. 測定の結果,均等照射したどの歯の切片でもエナメル質と象牙質の一部に強いESR信号が観察された.歯冠部に近い切片では近心の頬舌両側で同等にエナメル質の厚い部分に強い信号が観測されたが,歯頚部に近い切片では頬側の近心に強い信号が観測され,両者の中間の切片では頬側遠心に強い信号が観測された.また垂直に切断した歯の切片ではどれも咬頭に近いエナメル質の部分に強い信号が観測された. 室温で長期に安定して観測されたESR信号のスペクトルは歯の放射線照射により生じる既知のラジカル種のスペクトルと一致することから,これらの信号は歯のハイドロキシアパタイト中に不純物として微量存在する炭酸カルシウムに由来するものと考えられた.以上のことからX線やγ線によって口腔内で均等に照射された歯についてエナメル質はESR線量計としてほぼ一様な感度を有するが,象牙質の感度は場所により著しく差異のあることが明らかになった.歯のESR線量計測ではこのような感度分布の相違を十分に考慮すべきである.
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