Research Abstract |
歯科臨床において修復材料と歯質の接着性は修復物の寿命を決定する重要な因子であり,これは,修復材料自体の理工学的性質は勿論のこと,被着面,接着層自体の強度が複雑に絡み合って成り立っている.本実験は,これら接着を構成する各要素に対し,統一性のある評価パラメーターとして破壊靱性値(K_<1C>)を用い,修復物の接着特性評価を確立することを目的として計画された.第一段階として,接着層自体が存在しないグラスアイオノマーセメント修復に対し,破壊靱性試験法のセメントへの適応を調べると共に,セメント自体の破壊靱性値を測定した.供試材料としては,光硬化型のFuji Glass Ionomer TypeII LC,Vitremer,従来型としてFuji Glass Ionomer TypeII,対照として市販コンポジットレジン数種を用いた.内径8mm,外径16mm,厚さ3mm,切り欠き1mmのリング試験片を業者指定に従って作製し,水中環境下で電気油圧式サーボ疲労試験機を用いて疲労予亀裂を導入し亀裂長さを測定後,試料を水中に1週間浸漬し,万能試験機を用いてクロスヘッドスピード0.5mm/minで圧縮荷重を与え,得られたpop in荷重からK_<1C>:平面歪み破壊靱性を算出した.亀裂長さとK_<1C>の関係から,K_<1C>測定法のセメントへの適応が確認され,光硬化型であるFuji Glass Ionomer TypeII LC.VitremerのK_<1C>(MPam^<1/2>)はそれぞれ0.85±0.08,0.89±0.08であり,従来型のFuji Glass Ionomer TypeII 0.35±0.05の2倍以上の有意に高い値を示した(p<0.005).一方,コンポジットレジンと比較した場合,Heliomolar R0(0.6),Prisma microfine(0.62)を越える値を示し,歯質接着性,フッ素除放性を有する光硬化型グラスアイオノマーセメントのより大きな応力を受ける部位への適応の可能性が示唆された.本実験手法の中で,セメントへの予亀裂の導入,試片作成が難しく第二段階である象牙質面における接着特性評価は現在進行中である.
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