1994 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の被侵襲的循環モニターの開発に関する研究-末梢血管抵抗変動を指標として-
Project/Area Number |
06771902
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大渡 凡人 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (80194322)
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Keywords | 末梢血管抵抗 / Starmer法 / 高齢者 / トノメトリ法 / モニター |
Research Abstract |
高齢者では局所麻酔による偶発症が多いが,その大きな原因として交感神経緊張による後負荷の増大が考えられる。この後負荷は末梢血管抵抗で表現可能なため、末梢血管抵抗の変化(=比)を検出できれば循環系の有効なモニターとなる。そこで本研究ではトノメトリ法による橈骨動脈圧波形に心拍出量推定法であるStarmer法を応用して末梢血管抵抗比を求め、高齢者の局所麻酔による後負荷の変化を検出することにより、高齢者歯科治療の新しい循環系モニターとしての本方法の有用性について検討した。 【方法】 対象は抜歯予定で、循環系疾患、心電図異常、および自律神経系に影響する合併症のない高齢者8名とした。男性は4名、女性は4名で、平均年齢は74.5±6.1歳(SD以下同様)であった。被験者は入室後、トノメトリセンサー、レーザードップラー血流計プローブ、およびモニター心電図を設置した。30分間安静とした後、8万分の1エピネフリン添加リドカイン1.8mlによる浸潤麻酔を施行し、その前後で各信号の記録を行った。得られたデータから外注したプログラムを用いて一拍毎に収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧、駆出時間、およびRR間隔を測定し、10波形の平均値を求め、Starmer法による末梢血管抵抗比を算出した。2群間の差の検定にはWilcoksonの符号付き順位和検定を、相関についてはピアソンの相関係数を求め、危険率5%を有意水準とした。 【結果】 局所麻酔によりRR間隔は有意に短縮し、橈骨動脈圧は有意に上昇した。また、皮膚微小循環血流は有意に減少した。一方、推定末梢血管抵抗比では上昇例が麻酔直後で4例、2分30秒後および5分後で5例、10分後で1例であった。比率の平均は麻酔前を1とすると、麻酔直後で1.04±0.20,2.5分後で1.10±0.18、5分後で1.05±0.10、10分後で0.95±0.09であった。また、末梢血管抵抗比と皮膚微小循環血流の間には1群に有意な相関が得られただけであった。 以上の結果からトノメトリ法による橈骨動脈圧波形から推定した末梢血管抵抗比は、皮膚交感神経活動との相関が良好とはいえず、波形検出の安定化などの更なる改善が必要と思われたが、局所麻酔により交感神経緊張をよく反映し、高齢者の新しい循環系モニターとして有用と思われた。 なお、本研究の結果は94年度の日本老年歯科医学会(福岡)で発表した。
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