1994 Fiscal Year Annual Research Report
顎関節内障発症に関する有限要素法を用いた生体力学的シュミレーション
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06771924
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐 裕之 九州大学, 歯学部, 助手 (70253466)
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Keywords | 有限要素法 / 顎関節 / 応力 |
Research Abstract |
種々の条件下においての顎関節部応力測定のため、有限要素法ソフトウエアMARC,MENTATを用いて、要素数671個、接点数760個の2次元の歯を含む下顎骨・側頭骨モデルを作成した。骨、歯、関節円板、結合組織の材料特性値を設定し、咬筋、側頭筋、内側翼突筋を最大筋力で設定した。解析モデルの種類として、咬合支持数を減少させたモデル、関節円板前方転位モデル、関節円板を転位させ、かつ下顎頭を扁平化させたモデル、咬筋、側頭筋の筋力の比率を変えたモデルを作成した。コントロールとして全ての歯咬合支持させ、各筋の最大筋力で作用させたモデルで解析を行った。このモデルでは下顎頭前方部、関節円板中央狭窄部、関節結節後方斜面部に応力の集中が認められた。解剖学部にこれらの部分は軟骨が厚く出来ており、機能圧に対する反応と考えられているが、解析結果はこれを支持するものとなった。咬合支持数を減少させたモデルでは数の減少に伴い、顎関節各部に発生する応力値は増加し、特に、第1、第2大臼歯の咬合支持のないものは、最大の応力値を示し、顎関節症発症の一誘因であることが示唆された。関節円板前方転位モデルでは顎関節各部に発生する応力は、コントロールモデルより増加傾向を示したが、円板転位を起こした状態で下顎頭を扁平化させると、応力値は減少した。臨床的に骨の形態変化を示す症例は、大部分が関節円板の前方転位を伴っており、このことより関節円板が転位した状態での、骨の形態変化は、応力減少のために必要な合目的な反応と考えられた。筋力の比率を変えたモデルでは、咬筋の筋力変化は、直接的に顎関節各部の応力発生に影響を与えたが、側頭筋では、筋力の変化に伴う応力値の変化は小さなものであった。従って、同じ咀嚼に大きな役割を持つ2つの筋ではあるが、どちらかといえば咬筋の機能不全が、顎関節症発症に関わりがあることが考えられた。
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