1994 Fiscal Year Annual Research Report
ねじれた不斉空間を構造因子とする人工高分子の合成とその不斉認識能の解明
Project/Area Number |
06772081
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
土橋 保夫 東京薬科大学, 薬学部, 助教授 (30164099)
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Keywords | 分子認識 / 不斉識別 / ねじれの相補性 / 水素結合 / 鋳型重合 |
Research Abstract |
研究計画に従い、イミノジオキソラン型セレクター(R,R)-4,4´-bi[5-N-isopropylimino)-1,3-dioxolane](1)を鋳型分子とする鋳型重合を試みた。しかし、計画の当初に懸念されたように(R,R)-1は、酸性条件下で極めて不安定であることから重合させる単量体であるメタクリル酸と室温で混合すると瞬時に分解し、鋳型分子としての役割を果たすことが出来なかった。一方、本研究を遂行する上で、(R,R)-1と溶液中で不斉選択的会合を行う対掌体との会合構造を明らかにすることは、不斉選択性に係わる分子の幾何形状を把握するといった意味で大きな意義を持つ。そこで、標的対掌体としてビ-β-ナフトールを選択し、(R,R)-1とより安定な会合体を形成する(S)-ビ-β-ナフトールと(R,R)-1との共結晶を調製した。得られた単結晶のX線解析から、作業仮設である二本の分子間N…HO結合が確認され、会合体形成時における(R,R)-1の水素結合部位を含む分子表面を詳細に検討することが出来た。次に、(R,R)-1と類似した分子形状を持つアミジン型セレクター(S,S)-3(構造は研究計画調書参照)を鋳型とするメタクリル酸の重合を試みた。(S,S)-3は酸性条件下において、(R,R)-1と比べて飛躍的に高い安定性を示す。しかし、長時間の加温を必要とするメタクリル酸の重合においては、(S,S)-3も完全に分解した。以上の結果から目的とする鋳型高分子を合成するためには、より緩和な重合条件ならびにメタクリル酸に代わる、より酸性度の低い単量体を見い出すことが必要なことは明らかで、現在アリルアルコール及びその類縁体を単量体として用いることを検討している。また、重合において、鋳型分子は高極性の媒質中に存在することになる。従って、極性溶媒中でのセレクター1および3のコンホ-メーションを明らかにすることも重要であり、種々の計測も併せて行った。
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[Publications] Yasuo Dobashi: "Enantioselective Dual N…HO Bonding between(R,R)-4,4´-bi[5-((Z)-N-isopropylimino)-1,3-dioxolane]and (S)-1,1´-bi-2-naphthol." Tetrahedron Letters. 35. 9413-9416 (1994)