1994 Fiscal Year Annual Research Report
腎尿細管上皮細胞株LLC-PK_1における細胞外ATPによる細胞増殖と細胞死の調節
Project/Area Number |
06772188
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
原田 均 静岡県立大学, 薬学部, 助手 (30208681)
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Keywords | LLC-PK_1細胞 / 細胞外ATP / 細胞死 / 細胞増殖 / 腎尿細管 / プリン受容体 |
Research Abstract |
本研究課題は、腎尿細管上皮細胞株LLC-PK_1の増殖と死に対する細胞外ATPの調節の機構、特にその受容体との関わりを中心に明らかにしようと行った。最初に増殖に及ぼす影響を検討したところ、対数増殖期の細胞では細胞外のATPは、増殖を強く促進することが明らかになった。そこで、ATPに特異的に結合するプリン(P_2)受容体各サブタイプに選択的な誘導体の増殖促進能を比較したところ、P_<2z>受容体アゴニスト3'-O-(benzoyl)-benzoylATPが最も強い作用を示した。次に、各種蛋白リン酸化酵素阻害薬の影響を調べると、Ca^<2+>/カルモデュリンキナーゼII阻害薬KN-62に最も強い阻害作用を見出した。これらのことは、対数増殖期の細胞において細胞外のATPがP_<2z>受容体-Ca^<2+>/カルモデュリンキナーゼII活性化を介して細胞増殖を促進させることを示唆している。 一方、単層上皮を形成し増殖を停止した細胞においては、細胞外ATPによる顕著な増殖促進作用は認められなかった。これは、コラーゲン処理した膜上に培養した細胞を用い頂膜側あるいは基底膜側から作用させた場合でも同様であった。そこで、本培養条件下血清飢餓によって引き起こされる細胞死に及ぼす細胞ATPの影響について乳酸脱水素酵素活性の細胞からの漏出を指標に検討した。その結果、頂膜側からのATP添加は血清飢餓によって引き起こされる細胞死にほとんど影響しなかったが、基底膜側から添加は細胞死を促進させた。このことは、増殖を停止した細胞において、基底膜上にプリン受容体が存在し、細胞死と関連していることを示唆している。 本研究計画により、腎尿細管において細胞外のATPが細胞増殖ならびに細胞死の制御因子として機能することを示すことができ、細胞間情報伝達に関与する細胞外ATPの作用機序および生理的役割の一端を明らかにすることができた。
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