1994 Fiscal Year Annual Research Report
生物季節記録を用いた古気候の定量的評価に関する研究
Project/Area Number |
06780146
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
青野 靖之 大阪府立大学, 農学部, 助手 (40231104)
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Keywords | 古気候 / 小氷期 / 生物季節 / 温度変換日数法 |
Research Abstract |
1.開花時期に関するデータの収集:本研究では17〜19世紀の小氷期を中心に、日本の数地点におけるサクラの満開に関するデータを古記録中から調査した。その結果、この期間に限ると東京で137年分、京都で166年分(研究期間以前の調査分を含む)、広島で29年分など、満開(花見を含む)に関する記録(日付)が得られた。この他、九州や近畿地方の数地点でも断片的なデータを見出した。 2.開花時期と気温との関係づけ:満開日を春季気温(3月平均気温)に読みかえるための評価方法を検討した。解析には温度変換日数法という、気温による積算モデルを使用した。解析では、歴史時代から存在するヤマザクラのものと見なせる満開日データと3月平均気温との関係を見出せる様に留意した。東京や京都では3月平均気温の5年平均値を、RMSEで0.5以内の精度で推定できるようになった。 3.歴史時代における春季気温の経年変化の推定:以上の結果を踏まえ、17〜19世紀の3月平均気温の推移を評価した。東京では1700年代前後に約4、また1780年代後半〜90年代前半や1810年代前半、30年代後半に4〜5台と現在よりかなり低目に評価された。また1870年代には8周辺の値となり、ほぼ現在並みの値と高く評価された。京都や広島、九州(日田)の全般的な気温の推移パターンは東京のものとそれほど変わらなかったが、京都での変動の大きさは幾分東京より小さかった。とりわけ寒冷と見られた1830年代から比べると、現在は、都市昇温の影響を差し引けば、東京、京都、広島とも2前後高くなっていると評価された。こうした春季気温の推定結果は、既往の評価結果のうち寒候期(冬季)の気候を対象にしたものに、かなり符合する特徴が見られた。
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