Research Abstract |
本研究では,写実的画像生成のための超並列システム実現に向けて,その基礎となる新しい大域照明モデルを提案し,本モデルに基づいたシステム構成方式とその制御方式について検討した.具体的には,まず,物体情報を各プロセッサに分散配置するメモリモデル上での新しい超並列写実画像生成方式を実現するために,オブジェクト空間分割型並列処理方式に注目し,光線追跡法とラジオシティ法を統合した大域照明モデルにオブジェクト空間分割型並列処理方式を適用させて,新しい超並列写実的画像生成アルゴリズムを考案した.次に,本アルゴリズムに適した超並列計算機アーキテクチャについて検討し,システム構成,およびその制御方法を具体化した.最後に,本システムの性能評価のために,本システムのレジスタトランスファレベルでのシミュレーションが可能なシミュレータを開発し,いくつかのテスト画像生成でその性能を評価した.性能評価の結果,本システムは,256台程度まではプロセッサ台数に比例して処理時間が減少し,台数効果が得らることがわかった.また,システムの稼働率について検討したところ,256台以下では高い稼働率が達成されているが,それ以上のプロセッサからなるシステムでは,稼働率の著しい低下が観測された.この理由としては,本研究で考案した並列アルゴリズムでは,物体定義空間を静的に分割し,それをプロセッサに均一に割り当てることによりプロセッサへのタスク割り当てを行う静的負荷分散法を採用しているために,プロセッサ数を増加させた場合,それに見合う十分な空間分割が行われないと,負荷の不均一が発生し,その結果,プロセッサの稼働率に偏りが生じてしまうからである.これをさけるためには,より細かい空間分割を行うか,実行時のプロセッサの稼働率状態に応じてタスクの再配置を行う動的負荷分散を行うことが必要と思われる.これについては,今後の最重要課題である.
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