1994 Fiscal Year Annual Research Report
長距離輸送される桜島煙の遠隔地での検出手法に関する研究
Project/Area Number |
06780431
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
向井 人史 国立環境研究所, 地球環境研究グループ, 主任研究員 (30157713)
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Keywords | 桜島 / 噴煙 / 火山灰 / 長距離輸送 |
Research Abstract |
桜島の南側にある鹿児島市の有村観測所において粉じん試料を採取した.この時は北西風が吹いたため桜島からの噴煙が山の斜面を降りて観測所に達した.この採取を2回行った.比較試料として鹿児島市で採取された爆発時の降灰を鹿児島県の環境センターよりいただいた.遠隔地で採取された試料として沖縄で採られた粉じん試料,隠岐,屋久島等で採られたものを準備した. 爆発でない常時出ている状態の噴煙の試料を酸分解し誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて元素分析した.同時に鉛同位体比を測定した.同様に降灰の分析を行いデータの比較を行った.結果としてビスマス,タリウム,錫,鉛などの揮発性元素が噴煙中に濃縮されていることがわかった.特にビスマス,タリウムは濃縮度が高く指標元素として使えるものと考えられた.一方鉛同位体比は両者変わらず日本の基本的な岩盤と同じ値を持っていた.従ってこれに関しては指標性は期待できなかったが補助的には使えると思われた.この結果から,ビスマス,タリウムに着目して測定を行うこととした. 沖縄で特に北向きの風が強い時期に硫酸塩濃度が高い場合があり,この原因の一つとして桜島などの火山からの影響が想定された.また隠岐島で南西風時に高い硫酸塩が観測された場合などを検討した.その結果,沖縄の高硫酸塩濃度時には相対的に高いビスマス,タリウム濃度が観測され,火山からの影響があると考えられた.ただしそれらの濃度変化は硫酸の変化とは少し異なっており,なにか別の要因の検討が必要と考えられた(例えば桜島以外の火山からの影響など),一方,隠岐での場合は,特にビスマス,タリウムの濃縮がみられず,人為起源のものと判定された.今後,桜島に比較的近い屋久島での試料でのさらに検討を行いこれらの現象を確かめる予定である.
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