1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06780470
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
長崎 健 大阪市立大学, 工学部, 講師 (30237507)
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Keywords | 分子認識 / 糖 / フェニルボロン酸 / 二分子膜 / 不斉識別 / ケイ光物質 |
Research Abstract |
本研究においては蛍光性化合物に直接ホウ酸が共鳴した化合物や、分子内会合特性により糖を感知する新規化合物を設計し高感度糖センシング化合物を開発することを目的としている。本年度は基礎段階として、蛍光ラベル化剤の基本骨格に多用される7-メトキシクマリン構造を含むフェニルボロン酸誘導体を新規に合成した。次に新規合成した蛍光性フェニルボロン酸誘導体を用いて、合成二分子膜中での糖との錯化挙動を検討し下記の知見が得られた。 1.p-ホルミルフェニルボロン酸をプロパンジオールで保護した状態で4-ブロモメチル7-メトキシクマリンから誘導したホスホン酸体とWittig-Hornor反応を利用することにより反応させ高収率で4-(4-ボロノ)シンナミル7-メトキシクマリンを得た。4-(4-ボロノ)シンナミル7-メトキシクマリンは370nmで励起することにより470nmに蛍光極大波長を持つ蛍光を発することが明らかとなった。またこの蛍光はボロン酸基部分がアニオンを帯びることにより消光された。従って、フェニルボロン酸部分に糖がエステル結合することにより消光するので、蛍光測定により糖との錯化挙動を高感度で追跡することが可能である。 2.4-(4-ボロノ)シンナミル7-メトキシクマリンと糖との錯化挙動を合成二分子膜中で評価した。使用した二分子膜は親水部にトリメチルアンモニウム基を、スペーサーにはL-グルタミン酸基を、そして疎水部にはヘキサデシル基を有しているカチオン性二本鎖合成脂質を利用した。この合成脂質は螺旋状の二分子膜を安定に形成することが既に知られている。蛍光物質:合成脂質=25:1の割合で混合したところ、安定な二分子膜を形成することがDSC測定及び電子顕微鏡観測から確認された。またこの光学活性な二分子膜中で対掌体の糖に対する錯化挙動を検討したところフラクトースのL体を優先的に結合することが明らかとなった。今回の結果は細胞間認識における糖鎖の役割に対して一つの重要な知見を与えるものといえる。
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