1994 Fiscal Year Annual Research Report
自律神経系に及ぼすサイトカインによる中枢性作用の形態学的解析
Project/Area Number |
06780674
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
植村 信久 徳島大学, 医学部, 助手 (50184974)
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Keywords | 食欲抑制 / 中枢神経経路 / c-fos蛋白(Fos) / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
自律神経系に及ぼすサイトカインによる中枢性作用として摂食抑制作用に着目し、本研究を行った。サイトカインの中枢性作用に関する形態学的な報告はあるが、その摂食抑制作用を司る神経核あるいは神経経路は、特定されていない。サイトカインは、様々な中枢作用を示すため、作用部位に関する単なる形態学的な解析だけでは、その摂食抑制作用への責任領域を特定できない。そこで、摂食抑制物質による食欲抑制に働く神経経路と比較検討することにより、食欲抑制作用のためのサイトカインの作用部位が推定され得ると考え、ラットに摂食抑制物質である内因性有機酸2-buten-4-olide(2-B4O)を投与し、下位脳幹におけるこの物質の作用領域すなわち食欲抑制神経経路を構成する神経核を調べた。形態学的指標としては、神経細胞興奮のmarkerとされるc-fosを用い、c-fos蛋白(Fos)の発現を免疫組織化学的に検出した。2-B4O投与ラットの脳幹では、延髄(腹外側野、最後野、弧束核)、橋(青斑核、外側傍腕核、橋腹外側領域、背側縫線核尾側部、橋縫線核)、中脳(性側縫線核、正中縫線核、中心灰白質)においてFos免疫陽性反応が観察された。これらのFos発現は、脳幹神経細胞が食欲調節に働く上行性ならびに下行性ニューロンネットワークを構成していることを示唆した。また、Fosとカテコラミン合成酵素であるTyrosine Hydroxylase(TH)に対する二重免疫染色を行うと、核内Fosと細胞質THを有する神経細胞が脳幹の各レベルで検出され、カテコラミン作動性ニューロンが食欲抑制系神経経路の一部を成すことを示した。以上の結果を踏まえ、次の段階としてサイトカイン投与による中枢神経系でのFos発現を調べ、今回、明らかにした食欲抑制系神経経路と比較検討し、サイトカインによる摂食抑制を担う神経核および神経経路を同定する。さらに脳幹モノアミン(Catecholamine,Serotonin)系ニューロンの関与についても二重免疫染色を用いて検討する。
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