1996 Fiscal Year Annual Research Report
教科教育史像の再構築-技術教育と美術教育との関連問題より-
Project/Area Number |
06801027
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Research Institution | Yamanashi University |
Principal Investigator |
上里 正男 山梨大学, 教育学部, 教授 (80193788)
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Keywords | 手工教育 / フランス / スェ-デン / アメリカ / 普通教育 / 職業教育 / 技術教育 / 複線型学校体系 |
Research Abstract |
平成8年度には、平成7年度までに試みた欧米手工教育モデルの受容過程の分析をふまえ、そこに見られた欧米モデルの選択による我が国の手工教育の創造を、近代化を開始した我が国の当時の社会事情や教育事情に関する資料調査・研究と関係させながら特徴づけた。特に、複線型学校体系の成立以前の学校体系が未分化な時期に、普通教育と職業教育の両者の役割を担わざるをえなかった初等教育の性格と、その中でも手工教育の成立根拠を明らかにした。分析視点としては、普通教育としての技術教育理論と実践の発達が、それを支えた初等・中等教育制度改革(複線型学校体系が問題となる)との関連を取り上げた。さらにまた両者の発展に関連して普通教育概念の展開も看過してはならなかった。手工教育のモデルは、森文政期に参考にされたスェ-デンのスロイド(教育的手工)、フランスの「手の労働」科教育、アメリカのマニュアル・トレーニングなどであり、基礎的な技術教育を普通教育の一環として組織する国際的な動向に触発される形で高等小学校に手工教育が導入されたが、欧米の教育動向には、近代工業の急速な普及とそれに基づく国際的な経済競争の激化というインパクトが背景にあった。近代化をようやく開始した我が国の文部関係者は、手工教育の導入によって、欧米から国の近代化と教育を結びつける方法を、特に、フランスの「手の労働」科のような職業陶治を目標とする手工教育は取業陶治との関連が重要視された。これらの検討を通して明治期初期における学校教育と技術に関する教科との関連問題に対する認識を科学的・総合的に解明しようと試み、結果を明らかにした。
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