1994 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトにおける西洋式高等教育制度導入と新指導者層形成に関する比較教育学的研究
Project/Area Number |
06801033
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
田中 哲也 福岡県立大学, 人間社会学部, 助教授 (50207114)
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Keywords | イスラーム / エジプト / 教育 / 近代化 / 植民地化 / ウラマ- / マドラサ / クッターブ |
Research Abstract |
アラビア語および欧米文献資料により19世紀エジプトにおける近代教育制度の導入をめぐる諸問題についてかなり詳しい研究を行うことができた。特に研究前にあまり重視していなかった伝統的なイスラーム教育制度との断絶あるいは継承という側面の重要性を明らかにできたことは大きな成果であった。知識の概念、教育目的、教育方法などにおいて大きく異なる二つの教育制度は断絶という点においてはイスラーム的知の体系の温存という点から、その後現代にまでつながるイスラームと近代という問題を放置することになり、継承という点においては近代的初等・中等教育を担う教師養成努力の不足から暗記重視の教育方法の継続と各レベルの学校間の齟齬をもたらした。その成果についてはその一部を「伝統的イスラーム教育制度の研究:エジプトにおける近代教育制度の研究序説」(『福岡県立大学紀要』3-1)として公表した。次いでわが国では未だなされたことのない近代教育制度導入過程についての研究を行い、そのプロセスと問題点を明らかにすることができた。重要な問題点としては1882年のイギリスによる占領以前においては国家財政の破綻による財政問題と為政者による政策における継続性の欠如であり、占領下ではイギリスによる意図的な教育普及の抑制、さらに(形式的)独立達成後は国民の高等教育への需要への無計画な迎合による就職問題などが挙げられる。占領前については「19世紀エジプトにおける近代教育制度」(『福岡県立大学紀要』3-2)として公表する。(校正中)問題点としては一部の国外機関所蔵の資料の複写の入手に手間取り必ずしも十分な量の第一次資料を使用することができなかった点であるが、これについては継続する次年度にはある程度解決するめどがついた。こちらの方が最大の成果といえるかもしれない。
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