1995 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおけるパブリック・スクールとエリートの再生産過程の分析
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06801034
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大田 直子 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (40211792)
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Keywords | イングランド / パブリックスクール / 外部試験制度 / 英国 |
Research Abstract |
これまでの研究の結果、イギリスの社会は、階級社会と民主主義が併存する社会であり、その中での「エリート」像の確定が一義的ではないことが判明した。パブリック・スクール出身の「エリート」たちは、「財産・血統のエリート」でありながら「業績のエリート」であることも謳歌している。それに対抗して、公立学校部門でも「業績のエリート」を輩出すべく、奮闘してきた。しかし、この「業績のエリート」は、公立学校部門では、期待通りには増大しなかった。そのような中で、三分岐型中等学校は、より平等主義的なコンプリヘンシブ・スクール型に改組されていく。しかしこれはまた、子供たち全体を、メリトクラシー的社会(より平等な社会)に組織しなおすという期待にも答えるものとして考えられてきたふしがある(例えばハルゼ-など)が、すでに現在では「平等主義」とは敵対するとみなされている考え方となっている。このズレはどこから生じたのか。 本年度の研究の結果、以上の疑問に対して以下の仮説が導きだされた。まず第一に外部試験制度の存在である。外部試験制度はもともと大学進学者を選抜するために考案されたものであり、そのなかで古典的カリキュラムが重要視され、それによってパブリックスクールの地位が温存されてきたのである。第二に、なぜイギリスではこれほども長い間、パブリックスクールがエリート再生産機構として機能したのかという理由の一つとして、労働者階級の反学校文化の存在をあげることができる。むしろ通説といっても良いだろう。しかし、果してそれだけなのか。もしそうだとしたら学校は何等機能しないことになる。これについては、来年度さらに検討を加えることにする。また第三に、19世紀後半、パブリックスクールの頽廃が、とくにその中でもエリート校として重要な位置を占めていたイ-トン校において顕著であったこと、当時の教養人を巻き込んだ論争が起こっていたことなどがわかってきた。この結果、何がもたらされたのかという点が、20世紀を迎える時点でのパブリックスクールの近代化を解くことになると思われる。
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Research Products
(1 results)