1994 Fiscal Year Annual Research Report
ナチズムとアパルトヘイトの相互作用にかんする史的研究
Project/Area Number |
06801046
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
永原 陽子 千葉大学, 文学部, 助教授 (90172551)
|
Keywords | ナミビア / 南アフリカ / ナチズム / アパルトヘイト / ドイツ人入植者 / アフリカーナー / ドイツ同盟 / 反ユダヤ主義 |
Research Abstract |
ナミビアにおけるナチズムとアパルトヘイトとの関係史を分析するには、南部アフリカ全体でのこの二つの人種主義の展開についての概観を得ることが不可欠である。本年度は、史料の一部しか入手し得なかったこともあり(外国発注のものが未到着であることが主原因)、この点を研究の中心とした。 南部アフリカおいて、人種隔離が社会経済的にも空間的にも具体化し、人種が社会を規定する基本的要因となったのは、1900-02年の南ア戦争を通じてだった。その意味で、アパルトヘイトは南アにおいて国民党単独政権が成立する1948年ではなく、南ア戦争とその後の社会体制の再編の過程で成立したと考えるのが妥当である。しかし、その時代には、単に白人-カラード-黒人という人種ヒエラルヒ-が確立したのみならず、白人社会内部においてもイギリス人やアフリカーナーの民族的結集が根本的に強化されており、人種と民族という二つの座標軸に沿って、社会の細分化が進んだと言える。その中で、反ユダヤ主義というヨーロッパ産の人種主義が南ア社会において独自の意味合いをもって展開してくる。1890年代に鉱山地帯を中心に大量に流入する東欧出身のユダヤ人は、白人の中でも下層部分を形成し、これと貧窮化したアフリカーナー(いわゆるプア・ホワイト)の問題とは、密接に絡まり合いながら、白人社会内部の矛盾を拡大していった。ここにナチズムとアパルトヘイトとが相互に作用し合いながら黒人支配の体制を固めていく1920年代の人種主義の問題の原点を見ることができる。ナミビアにおいてはさらにイギリス人とアフリカーナーとの間にドイツ人が存在し、いっそう重層的な構造の中で問題が展開し、第一次世界大戦を経てそれが政治問題としても顕在化していった。
|