1996 Fiscal Year Annual Research Report
カレン語のチベット・ビルマ語派に於ける類型論的位置づけから見る中国語の起源
Project/Area Number |
06801064
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
藤井 文男 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40181317)
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Keywords | 言語類型論 / 言語普遍論 / 総括論(文法論) / チベット・ビルマ語派 / ビルマ語群 / クレオール / 言語変化 / 言語系統論 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、今年度も"談話"を念頭に置いた、inter-subject面に関する語法を中心に調査した。今年度は本研究の最終年度に当たり、当初の計画ではカレン語教科書の出版を予定していたが、予算の関係から出版自体は来年度の「成果刊行助成金」の方に廻し、昨年度の調査で非常に多くの問題を内抱していることが判明していた「談話機能」を持つ幾多の"不変化詞"の実態調査を、いわゆる"copulative predication"の構文法との絡みで集中的に推進した。 その具体的な機能や文法体系内での位置付けに対する言語学的な解釈・評果については本研究全体に対する報告書に譲るが、問題となる"不変化詞"は日本語の体言助詞「は」「が」「も」などに極似した談話機能を持ちつつ、別の視点からは全く別個の行動様式をとる。そもそも、こうした不変化詞は、その典型とされる日本語や朝鮮語などに於ける体言助詞を含め、a prioriに「談話機能マ-カ」として位置づけられるべきものなのか?或いは逆に確固とした、文法体系内に組み込まれている"文法的機能語"としての位置付けが、コンテクストに応じて"流用"されるのか?カレン語のように、まだあまりよく知られていない言語からの認識は、一般言語学的懸案に関する議論に対しても決定的な意味さえ持ちうる。特に過去2年間に渡る調査で、カレン語に関しては、少なくともその実態は相当程度、明らかになり、最初の具体的成果が「カレン語教科書」として示せるはずだが、当該地域を初め、インドシナ各地には、この点に関してはまだまだ調査の進んでいない言語がかなり残っている。今後の調査研究に大いに期待される。 類型論的に見ると、インドシナ地域は「動詞中置言語」と「動詞後置言語」の正に"衝突"とする地であり、両方の類型の特質を持つカレン語の位置付けは極めて微妙だ。今後の研究方向の足がかりを付けた、という意味からも、本研究の成果は十分に活用できるものとなるはずである。
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