1994 Fiscal Year Annual Research Report
行為と行為者に関わる古典語評価的副詞の甲法と行為論・価値論の構造
Project/Area Number |
06801068
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡部 勉 熊本大学, 文学部, 助教授 (50117339)
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Keywords | 古代ギリシア古典期 / プラトン / アリストテレス / ヘレニズム期 / 評価的副詞 / 行為論 / 価値論 / 徳論 |
Research Abstract |
平成6年度は、古典語(ギリシア語・ラテン語)評価的副詞の用法に関して、1.プラトンとアリストテレスが共有していた基本的な了解とはどのようなものであったか、2.同時代の他の文献的資料との比較研究によって、そのような了解をどのように評価すべきであるのか、3.プラトンとアリストテレスの間にある或る了解のずれについて、それが何に由来するものであるのか、4.両者の行為論・価値論の構造にそれはどのような影響を与えているのか、の4点を見極めることを目標としてきた。その結果、古代ギリシア古典期の作者とプラトンには共通して見出される評価的副詞の或る用法(文全体を修飾すると同時に行為と行為者の関係についても言及する用法)が、アリストテレス及び後代のヘレニズム期の作者には全く見出されないこと、また、評価的副詞と(徳または悪徳を表わす)抽象名詞の斜格表現との対応関係、評価的副詞と(徳または悪徳を表わす)抽象名詞の前置詞表現との対応関係が、アリストテレスとヘレニズム期の作者の場合にはほとんど意識されていないことが確認された。以上のことは、プラトンが主として行為者の視点から行為の評価及び行為と行為者の関係を問題にしようとしているのに対して、アリストテレスとヘレニズム期の作者の行為及び行為者の評価の視点は、専ら第三者的なものであること、また、アリストテレスと後のヘレニズム期の作者の場合には、行為と行為者の関係の問題は極めて図式的・形式的な問題であることと無関係ではないと思われる。研究の過程で、徳に関わる評価的副詞表現とそれに対応する抽象名詞の斜格表現及び前置詞表現との関係、また、それら(副詞表現と抽象名詞表現)に対応する形容詞表現との関係を分類整理する必要に迫られた。この点を明示的なものにすることによって、徳論の持つべき基本的な構造をより明確なものにすることができると考えられる。
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Research Products
(1 results)