1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06802002
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
宮野 雄一 岐阜大学, 教養部, 助教授 (20209927)
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Keywords | 憲法第25条 / 文化的生存権 / 比較法的研究 / 受刑囚の処遇の文化的側面 / 生活保護世帯の文化的レベル / 学校における文化享受能力育成 / ニュージーランド / スイス |
Research Abstract |
(1)初年度では、文化的生存権の比較法的研究のための文献調査と資料収集に努め、日本での研究の概観を得ようとした。外国調査の対象としては、主としてニュージーランドにしぼった資料収集に全力をつくした結果、ニュージーランド関係については、かなり充実した図書の集積が可能となった。またスイスなどドイツ語圏の資料については、次年度以降に収集することとした。 日本における調査の方法は、主としては、刑務所、生活保護世帯および学校に関するフィールド調査によって最低限度の文化的生活の実態を分析することとしたが、当面刑務所調査に力点をおくこととした。刑務所の実態調査としては、初年度では、神戸学院大学の木下智史助教授(憲法学)および石原教授(刑事政策)の協力をお願いして、先ず、和歌山女子刑務所を視察し、刑務官からのヒアリング調査等を行なうことができた。女子刑務所の場合、比較的,受刑囚を文化的に高め人間性の回復を援助するような配慮が感じられた。新聞ラジオテレビにアクセスすることができ、図書にも自由にアクセスできるが、ただし刑務所の秩序を乱すとされる文書・図画は、刑務官の判断によって削除、排除されているという。 (2)2年度の今年度は、昨年度(初年度)と同様、文献調査資料収集につとめたが、フィールド調査としては、主にひきつづき刑務所について行なった。今年度は、大阪の堺市の重罪男子刑務所を、やはり、神戸学院大学の木下、石原両教授の協力を得て、調査実施することができた。重罪刑務所では、受刑囚の扱いは、和歌山女子刑務所と比べ、かなりきびしく、女子刑務所にみられたような、芸能人の慰問などは、殆んどないといってよい。受刑囚の半数が暴力団とかかわっており、刑期を終了して出所しても6割近くが再び犯罪を犯すという統計データが示され、芸能人の付き人によって麻薬等の持ち込みがなされたことがあったため、芸能人の慰問自体が禁止されるに等しい状態になってしまったという。今後とも刑務所調査を続け、府中刑務所、姫路刑務所、神戸刑務所の調査を行なう予定である。 本年度3月より、初年度の研究代表者がニュージーランド留学10ケ月するので来年度はその成果が期待される。
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