1995 Fiscal Year Annual Research Report
二十世紀後半ポーランドにおけるミクロ的経済合意システムの形成過程の生活史的研究
Project/Area Number |
06803006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉野 悦雄 北海道大学, 経済学部, 教授 (80142678)
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Keywords | ライフ・ヒストリー / 生活史 / ポーランド / 家族 / 農村社会 / 回想録 / 作文コンク-ル |
Research Abstract |
1.本年度も私費にてポーランドに渡航し,現地にて生活史研究にかかわる資料を収集した。その収集資料については,研究成果報告書に記載したとおり,合計28点,約2万頁にのぼる。主にポーランドで実施された作文コンク-ルの受賞作品であり,また個人の農民が自分の人生を回想した自叙伝が3冊ある。収集に際しては,現地の市場経済化にともない,図書館のコピーサービスが停止し,民間のコピー業者に私費にて依頼するということになった。本年度ではまずこれらの資料の分析を行った。あわせてポーランドの関連法令を収集し,若干のものを翻訳し,国内の関連研究者に配布した。また,一橋大学で購入された,フーバー研究所文書の東欧関連図書のうち若干のものを収集した。関連する研究テーマとして,隣国リトアニアの村落での合意システムの調査を行い,分析結果を発表した。また市場経済化にともなう農村部の変化について分析結果を発表した。生活史資料分析の方法論に関する考察を,本研究の研究成果報告書の中で公表した。生活史資料の解題も同書で公表した。 2.今年度の研究で新たに得られた知見は,1976年までの戦後ポーランドの村落部での経済合意システムの基幹は部落長であり,その調整機能は戦前と基本的に同じであることが解明されたことである。また兄弟間での遺産分割などの超ミクロ合意システムも戦前と変化ないことも分かった。しかし,1976年以降,作文コンク-ルがほとんど実施されていないため,近年の傾向,とりわけ社会主義崩壊後の市場経済化過程におけるミクロ的合意システムを解明することができなかった。経済分析における生活史資料利用の手法は,分析対象をかなり特定しないと,効率的な分析が行えないということが分かった。一方,過去の歴史的事実を解明する場合に公文書資料と並んで極めて有益な情報を提供してくれることが分かった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 吉野悦雄: "市場経済化過程のポーランド農業(2)" ロシア・東欧の農業. 7/2. 3-28 (1995)
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[Publications] 望月哲男(スラブ研究センター長): "地域からの東欧史" 北海道開発問題研究調査会, 118 (1995)