1994 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解電子ラマン散乱分光による超伝導体の動的応答特性の解明
Project/Area Number |
06804016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山中 明生 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (30182570)
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Keywords | 時間分解電子ラマン散乱 / 超伝導体 / 動的応答特性 / 超伝導準粒子 / フォノンラマン散乱 / パルスレーザー / インターカレーション化合物 / ハロゲンインターカレーション |
Research Abstract |
高温超伝導体では多くの研究報告があるが、超伝導準粒子の動的緩和特性に関しては殆ど研究例がない。従って本研究では、時間分解電子ラマン分光法により、(1)超伝導準粒子の緩和特性時間(緩和寿命)を直接観測し、超伝導ギャップの性質を解明する。(2)基底状態への緩和機構を解明する。則ち、不純物散乱やフォノン散乱が支配する機構なのか、それとも強い電子相関が支配する新しい機構であるのかを明らかにする。 本研究では、試料の局所的温度上昇が測定の妨げになることが予測され、高精度温度コントローラを購入し改善を図った。整備した測定系の性能テストを兼ねて、通常型のフォノンラマン散乱分光及び電子ラマン散乱分光を行い次のような成果を得た。(1)Bi系超伝導体の超伝導転移温度直上において、電子ラマンスペクトルに異常が見いだされた。この結果は、主に電荷応答を観測する電子ラマン散乱によって、スピン励起の異常が観測可能であることを強く示唆している。(2)ハロゲンインターカレートによりBi系超伝導体にホールが添加されることがわかった。特にヨウ素インターカレーション化合物では、ヨウ素はI_3^-及びI^-として存在し、その比率が濃度により異なることがわかった。 実験系の性能確認の後、過渡的電子ラマン散乱分光実験をも本格的に試みた。この分光法は、強いパルスレザー光入射による超伝導状態の変化を、同一レーザー光による電子ラマン散乱により観測する実験である。その結果、レーザー光入射による超伝導状態の破壊が初めて見いだされた。しかしパルスレーザーの繰り返し周波数が大きいため、レーザー光入射による超伝導破壊が、温度上昇効果であるのか、伝導電子の光注入による電子相関の増大によるものかは解明されていない。このため現有レーザーの低繰り返し化・高強度化を図り過渡的電子ラマン散乱分光実験を再開している。
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