1995 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解電子ラマン散乱分光による超伝導体の動的応答特性の解明
Project/Area Number |
06804016
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山中 明生 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (30182570)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 電子ラマン散乱 / 時間分解電子ラマン散乱 / d波超伝導 / 超伝導準粒子 / 超伝導ギャップ / Sr_2RuO_4超伝導体 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
超伝導準粒子の動的特性は、酸化物高温超伝導の超伝導機構解明に関して重要知見である。即ち、時間分解電子ラマン分光により準粒子の緩和機構の理解し、超伝導ギャップの性質などを解明することが可能と考えられる。しかし、高温超伝導体におけるの時間分解電子ラマン分光研究例はないので、本研究では萌芽的研究として基礎な研究を行った。 前年度の研究により、幾つかの技術的困難さが明らかになった。本年度は、以下に記すような問題を解決することに主力をおいた。 1.色素レーザーから生ずる蛍光が測定の妨げになるので、本研究では高精度の干渉フィルター,及び設計・自作したゼロ分散型フィルターの使用により、蛍光除去に成功した。 2.高感度CCD型光検出器で生ずる宇宙線ノイズの除去のため、新しいアルゴリズムに基ずくコンピューターソフトを開発した。その結果、長時間のデータ蓄積が可能となった。 技術的問題の解決にかなりの時間を要したため、予定年度内に研究目的のすべてを達成することはできなかった。しかし本研究により、酸化物高温超伝導体において時間分解電子ラマン分光実験が可能であることがわかった。開発した分光技術を用いて通常型電子ラマン散乱分光により成果を得た。特に成果1.により本研究の最大の目的が達成された。 1.低エネルギー電子ラマン散乱強度の温度・偏光依存性の精密測定に成功した。その結果、酸化物超伝導体がd波超伝導であること、さらに超伝導秩序度がx^2-y^2の対称性を持つことが明らかになった。 2.酸化物高温超伝導体と同じ結晶構造を持つ最近発見されたSr_2RuO_4超伝導体の電子状態を電子ラマン散乱分光により研究した。その結果、Sr_2RuO_4超伝導体が酸化物高温超伝導体と同様に電子相関の強い強相関電子系であることが明らかになった。
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[Publications] A.Yamanaka,K.Inoue: "Comparison of the soft polar phonon in hexagonal barium titanate and ATiO_3 perovskite compounds" Physica B. (印刷中).
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[Publications] A.Yamanaka,他: "Investigation of low-energy electronic response in high-T_c superconductor by Raman spectroscopy" Proceedings of Spectroscopic Studies of Superconductors. (印刷中).
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[Publications] A.Yamanaka,他: "Electronic Raman scattering spectra of Sr_2RuO_4 single crystals" Physica C. (印刷中).