1994 Fiscal Year Annual Research Report
初期キリスト教教会堂建築に於ける建築空間と神学的空間概念の同一性の研究
Project/Area Number |
06805058
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
竺 覚暁 金沢工業大学, 工学部, 教授 (30064447)
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Keywords | 初期キリスト教建築 / 建築空間論 / 建築論 / 初期キリスト教哲学 / 中世哲学 / 存在論 |
Research Abstract |
本研究の基礎をなす課題として先ず、建築空間の本質、その構造規定を精査し明確化しておく必要があった。このことに関しては既に基本的な研究を行い数編の論文に纏めて発表してあるが、本年度はこの結果をもとに更に根本的にこの問題の研究を行った。文化人類学における始源的住居の研究を参照し、建築空間の本質は空間の意味的分節の樹立ということであることを明らかにし、ユクスキュルの環境世界論に基づいて、それがハイデッガ-によって解明された人間存在の構造-現存在の空間性に根ざしていることを論証した。この成果を「建築論の場面と根底」と題する論文に纏めた。更に、空間の意味的分節の樹立という建築空間の創造が、現存在の空間性に基づく世界投企による世界適応であり、世界像の象徴的実現であることを、マリノウスキーの文化理論、フッサールの世界地平論を参照しつつ、ハイデッガ-の所論に基づいて詳細な論証を行った。この成果を「空間概念の基礎構造」及び「建築空間の基礎構造」と題する二編の論文に纏めた。以上の三編の論文は拙著『建築の誕生(中央公論美術出版、平成七年刊)』の序論部分に収め、公表した。 現在は、上記の論究によって明らかになった建築空間の存在論的構造、世界像-世界空間の象徴構造を基礎として、初期キリスト教神学の解釈、世界像-世界空間のありよう-それはアウグスティヌス以後のキリスト教終末論の確立に於ける時間観、ある終結点に向かって一定に流れる時間、唯一の方向性をもったベクトル的時間観の空間化として捉えられる-を論証中である。平成七年度にこの成果を論文として公表する予定である。
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