1994 Fiscal Year Annual Research Report
泌尿・生殖器を抑制する交感神経回路の比較形態学ならびに機能的解析とそれらの性差
Project/Area Number |
06807001
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 健次 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20107246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 和徳 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (40161541)
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Keywords | 自律神経 / 交感神経 / 腰内蔵神経 / 射精 / 内尿道口の閉鎖 / 比較形態学 |
Research Abstract |
泌尿・生殖器を抑制する骨盤部の自律神経の構成はヒトでは交感神経系として下腹神経と仙骨内蔵神経(約半数に存在)が、副交感神経系として骨盤内蔵神経が存在する。四足動物では下腹神経と骨盤神経によって骨盤神経叢が構成される。比較解剖学的には高等霊長類で交感神経系の形態学的分化が明瞭になるが、まだヒトにおいても完成の域には到達していない。これらの自律神経の分化は腹部においても同様であり、四足動物では下腸間膜動脈起始部に単一の神経節として存在する下腸間膜神経節が、ヒトでは腸管を支配する下腸間膜動脈神経節と骨盤内蔵を支配する上下腹神経叢に分化している。霊長類ではヒトの所見に近似している。 下腸間膜神経節を構成する自律神経線維群は大内蔵神経由来とされる中央線維群と腰部交感神経幹由来の側方線維群(腰内蔵神経)に区別され、これまで前者はemissionに、後者は内尿道口閉鎖に関係するとされてきた。犬を用いた自律神経の電気刺激実験で両機能はいずれも側方線維群を構成する腰内蔵神経によって営まれ、その起始は第3-5腰椎の第3-5交感神経幹神経節から起こる第3-5腰内蔵神経であり、その脊髄における高さは第2-4腰髄であった。これは骨盤の臓器を支配する交感神経の脊髄中枢が腰髄であることを示す所見である。これらの交感神経成分の大多数は下腹神経を介するが、一部は仙骨部交感神経幹一骨盤神経を介し、この神経回路は下腹神経切断時の代償機能を有する。しかし、内尿道口に関しては完全な閉鎖までは回復しない。射精を支配する腰内蔵神経は腰部交感神経幹を出たのち、中枢側では下腸間膜神経節、末梢側では前立腺神経叢で左右の神経線維群の交叉を営み、片側の腰内蔵神経が対側の精路を支配するという同側優位・両側支配の2重交叉現象が観察され、いわゆる自律神経の対側支配という新知見を得ており、これは視神経交叉に対比される重要な所見と考えられる。さらに、骨盤神経を経由する代償路においてもemissionに関して両側支配が観察されている。これらの交感神経系の機能に関する組織学的裏ずけに関しては交感神経節後線維に対するチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を用いた免疫組織科学染色法で陽性を呈する神経細胞や神経線維の存在が確認されている。
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[Publications] 佐藤健次: "骨盤内自律神経の外科解剖学" 外科治療. 71. 387-394 (1994)
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[Publications] KAZUNORI KIHARA: "A New Method to Generate Caine Seminal Emission and Its Application to Men:Direct Stimulation of the Vas Deferens" J. Androl.15. 479-483 (1994)
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[Publications] 佐藤健次: "犬の seminal emission と内尿道口の閉鎖機能を支配する腰内蔵神経の腰椎レベルでの起始構成について" 自律神経. 31. 679-686 (1994)
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[Publications] 佐藤健次: "犬の下腸間膜神経節を構成する中央線維群と側方線維群のseminal emission,内尿道口の閉鎖ならびに結腸支配に関する研究" IMPOTENCE. 9. 199-205 (1994)