1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06807013
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
古谷田 裕久 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (60211249)
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Keywords | 伊東細胞 / 細胞外基質蛋白質 / レチノイド / I型コラーゲンα1鎖 |
Research Abstract |
肝類洞でレチノイド貯蔵を担当する伊東細胞は、肝線維化に際して分裂増殖し細胞外基質を産生すると報告されている。この機能分化に働く分子機構解明のため、伊東細胞株の樹立とその性質解明を平成6年度に試みた。レチノイドの油滴を持つ伊東細胞は、コラゲナーゼとプロナーゼ灌流で分散したラット肝から肝構成細胞中最も比重の軽い細胞として分離される。メトリザマイド密度勾配遠心で、伊東細胞は8%メトリザマイド画分に95%の純度で含まれていた。この8%画分細胞の継代中、NIH3T3細胞より大きな核と細胞質を持ち、免疫組織化学で細胞質内に伊東細胞の特徴とされるデスミンが検出できる細胞を分離した。この細胞株はプラスチック基質上で約40時間の細胞周期で増殖し、高いI型コラーゲンα1鎖(α1(I))mRNAレベルを示した。細胞外基質蛋白質軟ゲルとの接触で、株化細胞の細胞周期は4倍に延長し、そのα1(I)mRNAレベルは4分の1に低下した。株化細胞をヌードマウス皮下へ移植したが腫瘍は形成しなかった。これらの結果より、樹立細胞株の増殖速度とα1(I)mRNAレベルの変化は、本細胞と細胞外基質との接触で働く情報伝達系により制御されている可能性が示唆された。株化細胞の由来を解明するため、UVレーザーで励起され、485/45BPフィルターを通して検出できる蛍光をレチノイド由来と判断し、株化細胞のレチノイド含量を付着細胞分析分取装置で測定した。プラスチック基質上、10%牛胎児血清を含む培地で継代したコントロールの株化細胞の蛍光強度は、分離直後の伊東細胞のそれの5%以下であった。しかし、細胞外基質蛋白質軟ゲルと接触し、10%ラット血漿を含む培地中でHepG2細胞と共培養した株化細胞はコントロールより1.5-倍高い蛍光強度を示した。これらの結果から本細胞は伊東細胞由来と考えられた。細胞外基質が細胞のレチノイド貯蔵に働く事実は新しい知見である。本細胞株は、細胞の増殖やレチノイド貯蔵に果たす細胞外基質の役割や、そこで働く情報伝達因子の解明に利用可能と考えられた。
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