1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06807081
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
保坂 隆 東海大学, 医学部, 講師 (10156995)
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Keywords | がん / コーピング / 対処様式 / 精神療法 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目的は、どこの医療機関で誰が行ってもほぼ同じような臨床的な効果が期待できる集団精神療法をマニュアル化することである。そこで、まず精神療法的な介入のターゲットを同定するために、がん患者がどのような情緒状態にあり、特に病気を克服するためにどのようなコーピング・スタイル(対処様式)を用いているのかを調査した。今回の研究では、研究参加の同意が得られた乳がん患者60名を、個別に面接し、同時に心理テストを施行した。コーピング・スタイルの評価は、米国でつくられたDealing with lllness質問表を用いたが、Cronbachアルファ係数を算出することにより、この質問表が日本人でも十分に利用できるという「妥当性」がまず確認された。さらに質問表を解析することにより、がんに罹患することによってさまざまな対処様式が著しく増加し、積極的な行動だけでなく消極的・回避的な行動も有意に増加していることがわかった。さらに、これらの対処様式と、Profile of Mood States(POMS)質問表によって評価される情緒状態との相関性を検討した。その結果、この消極的・回避的な対処様式は、抑うつなどの否定的な情緒状態と関連性が高いことが明らかになった。がん患者のサポートと言った場合、情緒状態を改善し、患者QOLを高めることを意味している。本研究でわかったことは、がん患者の精神療法の際には、患者の情緒状態を直接的に扱うだけではなく、否定的な情緒と関係している「対処様式」を扱う必要があることがわかった。そして、これを元にしてまず個人を対象とした精神療法マニュアル-第1版-を作成した。今後は、このマニュアルを用いて、まず個人精神療法の方法を確立し、さらに集団精神療法マニュアルへと発展させていきたい。
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Research Products
(1 results)