1994 Fiscal Year Annual Research Report
肩峰下インピンジメントによる腱板変性の生化学的解析
Project/Area Number |
06807120
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中島 知隆 東海大学, 医学部, 助手 (90227794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 成 東海大学, 医学部, 助手 (00240028)
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Keywords | 肩関節 / 腱板 / 活性酸素 / 肩峰下インピンジメント |
Research Abstract |
平成6年度においては、動物生体の腱組織におけるFree radicalの存在および年齢別差異を明らかにした。 幼若群(8週令)と成熟群(24週令)のWister系ラット7匹の両側アキレス腱計14ケを対象とした。左アキレス腱の腱内血流量が0%、50%に低下するように腱の起始部と停止部をクリップにて10分間隔で10分間、計10回圧迫後、腱を縦に二分した。一片を中性緩衝ホルマリン液で固定し、ヘマトキシリン・エオジンおよびアザン・マロリ-染色を行い組織像を光顕的に観察した。他方の組織片は液体窒素にて瞬時凍結後、電子スピン共鳴(ESR)法によりFree radicalを測定した。なお、右側アキレス腱は対照群とした。幼若群のアキレス腱に比べて成熟群の光顕下組織像では全体的に腱線維の波状構造が消失していただけでなく、腱中心部における好中球様小円形細胞の浸潤、線維間隙の拡大がより顕著であった。左右を比較すると、左側アキレス腱ではとくにこの単核細胞浸潤が特徴的であり、虚血・再潅流ストレスに起因した組織反応であることがうかがわれた。ESRスペクトルに関しては、成熟群が幼若群より著しく高いピークを示していたが、右側対照腱との差はむしろ幼若群の方が大きかった。すなわち、成熟群のアキレス腱では生前変化(老化?)としてより高濃度のFree radicalを含有するものの、その産生効率は幼若群において高かった。これは幼若な(腱)組織が豊富な血行を有し、その酸素代謝が成熟群に比べて亢進しているためと推察された。さらに、腱内Free radical含有量を部位別に比較すると腱中心部と腱停止部が最も高く、前者では小円形細胞浸潤部に一致、後者は「腱付着部症」(enthesopathy)を示唆する結果と思われた。 次年度はこれらの結果に基いて、ヒト腱板組織におけるFree radicalの存在および局在性を検討する予定である。
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