1995 Fiscal Year Annual Research Report
不斉配位子を含まない光学活性遷移金属錯体の新規合成法の開発
Project/Area Number |
06807162
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Research Institution | Tokyo University |
Principal Investigator |
笹井 宏明 東京大学, 薬学部, 助教授 (90205831)
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Keywords | ガリウム / アルミニウム / 光学活性錯体 |
Research Abstract |
光学活性な遷移金属錯体には、不斉合成における触媒として有用なものが多数知られている。その多くは光学活性なキラル分子を遷移金属への配位子として用いている。しかし、6配位8面体構造を有する遷移金属錯体を、アキラルな2座配位子3分子を用いて形成させると中心金属が不斉点となり、配位子の交換速度が遅い場合には光学活性な遷移金属錯体として単離可能となる。すでに、コバルトやルテニウムなどを中心金属とする錯体が単離構造決定されているものの、それらの合成法はラセミ体の光学分割によるものであった。また、このような不斉配位子を含まない錯体で、不斉触媒としての機能を持つものは知られていない。一方、我々の研究室では光学活性な2座配位子であるビナフトールを3分子含む希土類錯体の調製に成功し、不斉ニトロアルドール反応、不斉マイケル反応、不斉ヒドロホスホニル化反応において優れた触媒となることを見いだしている。しかし、工業的な展開においては高価な不斉源を最小限の使用量に押さえることが望ましい。そこで、アキラルなビフェノールに対して触媒量の光学活性ビナフトールを加えて、光学活性な希土類錯体を調製することを検討した。調製した錯体の各種スペクトルデータは、アキラルな配位子により8面体錯体を形成していることを支持していた。しかし、錯体調製時の配位子交換速度について検討したところ、配位子交換が非常に速やかに起きていることが分かったため、希土類以外の金属を検討した。その結果、光学活性配位子を用いてガリウムや、アルミニウム錯体の調製に成功し、新規な不斉触媒としての機能を見いだすことが出来た。現在、アキラルな配位子を用いて光学活性なガリウム錯体の形成を検討している。
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