1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06832006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 豊 東京大学, 大学院・理学系研究家, 助教授 (90192468)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 彩子 気候システム研究センター, 学術振興会特別研究員
|
Keywords | 初期地球 / 完全凍結 / 気候安定性 / 水輸送 / 熱輸送 / 氷床モデル / エネルギーマスバランスモデル |
Research Abstract |
太陽の進化に伴って太陽放射は徐々に増大しているため、惑星形成直後の太陽放射は現在よりも3割ほど小さかったと考えられている。現在の地球大気のまま太陽放射を3割も小さくすると、地球は完全に凍結してしまう。しかも、完全に凍結してまうと、氷の反射率が高いために現在の太陽放射になっても完全凍結状態は安定で、凍結状態が現在まで続くはずであると信じられている。このため、一般には、初期の地球で完全凍結を回避する何かの機構が存在したと考えられている。しかし、実際には惑星表面上での水蒸気輸送その他の効果のために完全凍結状態そのものが不安定化する可能性がある。本研究では理論的なモデルを用いてこの不安定化について検討した。 1.南北一次元の熱・物質輸送大気モデルと氷床流動の力学モデルを結合した惑星気候の数値モデル(エネルギーマスバランスモデル)を開発した。 2.開発された惑星気候モデルを用いて完全凍結惑星の気候の安定性を検討した結果、次のことが明らかになった:(a)南北方向の水輸送量は最大で5x10^<16>kg/yに達しえる。これは1万6000年以内に緯度40℃以下にあるすべての氷を緯度40℃以上へ運ぶことが可能な大きさである。(b)この輸送量は氷床流動によって高緯度から低緯度に氷が張り出す効果に打ち勝つほど大きい。(c)緯度40℃以下の氷が失われれば、アルベドが低下し、全球凍結状態から脱出することは可能である。(d)したがって、完全凍結状態は原理的に不安定である。(e)現実に不安定化するか否かは大気中の水蒸気輸送効率に強く依存し、これを明らかにするには完全凍結状態での大気循環のよりよい理解が必要である。
|