1994 Fiscal Year Annual Research Report
釉薬を中心とした陶磁器歴史資料の産地および製造技術に関する自然科学的研究
Project/Area Number |
06834011
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (50205663)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 勇 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 教授 (50192159)
|
Keywords | セラミックス / 陶磁器 / 釉薬 / X線CT / 元素分布分析装置 / X線マイクロアナライザー / 走査型電子顕微鏡 / 色彩輝度計 |
Research Abstract |
奈良時代の鉛釉陶器、江戸時代の施釉陶器(唐津焼、美濃焼、瀬戸焼)等についてX線CTスキャナー、元素分布分析装置、X線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡などを用いて主として物性および主成分元素組成の分析を試み、これらの手法の有用性について検討を加えた。また、色彩輝度計によって、釉薬の色を数値化し、元素組成との関係を解析した。その結果、 1.X線CTにより陶器片の非破壊迅速分析を行い、この方法が資料の密度の違いや内部の気孔の分布など、焼成温度や製作技法の解析に有用であることを見出した。2.元素分布分析装置によって釉薬における元素の分布について非破壊で分析を行い、この方法が、各色に応じた元素の種類や部位による配合の違いなど、製作技法や産地による相違の解析に有用であることがわかった。また、X線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡および色彩輝度計を用いた解析によって以下のことを見出した。3.それぞれの陶磁器において釉薬と胎土の組成の違いが検出された。これは軟化温度の違いなど、製作技術を反映していることがわかった。4.江戸時代施釉陶器については、主成分元素組成において地域による特徴が表れていることがわかった。5.江戸時代施釉陶器の色彩分析の結果、肉眼観察によって分けられた釉薬の種類ごとにグル-ピングすることができた。この結果により、釉薬の色を分析科学的に解析することが可能であることがわかった。6.今年度測定した資料では、釉薬は、アメ釉、黒釉、黄唐津など鉄が発色の要因となるものと、織部、緑釉、鈞窯釉など銅が発色の要因となるものがあり、発色要因元素濃度と色彩分析の顕色系の表色値であるL^*a^*b^*の数値との間には相関関係が認められた。なお、これらの研究成果の一部について、「第18回文化財の保存および修復に関する国際研究集会」(1994年10月・国立教育会館)などで報告を行った。
|