1994 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性好冷細菌のNa^+輸送性ATP合成酵素に関する研究
Project/Area Number |
06839001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高田 泰弘 北海道大学, 理学部, 講師 (10163213)
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Keywords | 海洋細菌 / 好冷細菌 / エネルギー代謝 / ATP合成酵素 / ナトリウムイオン / 共役イオン |
Research Abstract |
平成6年度では、海洋性好冷細菌の膜結合性ATPaseの精製と突然変異体分離のための一次スクリーニングを遂行する計画であったが、ほぼ予定通りに研究が進行した。特に、本研究課題の遂行上最も重要でかつ基本的な膜結合性ATPaseの精製は、本菌の内膜を界面活性剤であるTriton X-100で処理することにより本酵素を可溶化させ、これを出発材料としてポリエチレングリコールによる分画、蔗糖密度勾配遠心とDEAEイオン交換クロマトグラフィーを組み合わせて行われた。その結果、ほぼ完全に精製することができた。この精製酵素の基質特異性、種々の阻害剤に対する感受性やSDSPAGEよって明らかにされた本酵素のサブユニット構成とその分子量などから、この酵素が好気性生物に遍在するH^+輸送性F_0F_1型のATPaseに類似した性質を持つことが明らかとなった。このことは、本精製酵素が大腸菌のH^+輸送性F_0F_1-ATPaseのα,βやbサブユニットに対する抗体と交差反応を行うのに対して、ヤエナリ液胞膜ATPaseのサブユニットに対する抗体とは反応しないことからも確かめられた。一方、精製酵素のATP加水分解活性は本菌の好冷性にもかかわらず50℃で最大活性を示したが、ATP合成に必須なF_0F_1の四次構造が30℃以上の温度では急速に失われることが阻害剤を用いた実験から明らかとなった。この現象は従来より知られるH^+輸送性F_0F_1-ATPaseの低温感受性とは対照的で、本菌の好冷性を考慮すると大変興味深い問題を含んでおり、低温でもその四次構造を維持できるような特徴を本酵素が有していることが示唆される。これらの成果は現在論文発表の準備中である。 H^+輸送性F_0F_1-ATPaseかNa^+輸送性ATP合成酵素のどちらかの機能を欠く突然変異体の分離については、ニトロソグアニジンによる突然変異誘発や自然突然変異体からのネオマイシン耐性株の分離と、その後の一次スクリーニングを数回行い、現在までの数十株の候補株を得ている。
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